ベートーヴェン:七重奏曲 変ホ長調, Op.20(Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20)
バリリ弦楽アンサンブル&ウィーン・フィルハーモニー木管グループ:1954年録音(Barylli String Ensemble:Vienna Philharmonic Wind Group:Recorded on 1954)
Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20 [1.Adagio - Allegro con brio]
Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20 [2.Adagio cantabile]
Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20 [3.Tempo di Menuetto]
Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20 [4.Andante con variazioni]
Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20 [5.Scherzo: Allegro molto e vivace]
Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20 [6.Andante con moto alla marcia - Presto]
七重奏曲のベートーヴェンさん
「七重奏曲 変ホ長調, Op.20」は若きベートーヴェンの才能が存分に発揮された初期の作品です。1799年から1800年にかけて作曲され、当時のウィーンの聴衆の好みに合わせた明るく優雅なディヴェルティメント様式で作曲されています。
そして、その狙いはズバリ的中したようで、1800年4月2日にウィーンのブルク劇場で初演された演奏会は大成功を収めました。その人気は、作品の初版が出版される前から海賊版が出回っていたとも言われているほどでした。
しかし、そのあまりの人気故に、ベートーヴェンはいつまでもこの作品がもてはやされ続けるのを拒んだと言われています。
何しろ交響曲第2番や第3番が発表された後も変わらぬ人気を誇り、いつまでも「あの七重奏曲のベートーヴェンさん」と言われるのが耐えられなかったようです。
この作品を書いた時のベートーヴェンは古典派音楽の勉強をしながらも自らの独自性を模索する時期でした。ですから、「俺はそのあとにもっといい作品を書いている」とぼやいていたようです。
「七重奏曲」の編成は以下の通りです。
クラリネット
ファゴット
ホルン
ヴァイオリン
ヴィオラ
チェロ
コントラバス
古典派から初期ロマン派の作曲家にこの編成は多いようです。
シューベルトもこの作品に影響されて八重奏曲を書いたとされ、その楽器編成はベートーヴェンの七重奏曲にもう一本ヴァイオリンを増やしたものになっていました。
第1楽章 アダージョ - アレグロ・コン・ブリオ
壮麗な序奏の後に、ヴァイオリンが堂々とした主題を奏でる。ます。
第2楽章 アダージョ・カンタービレ
優しく美しい旋律が歌われる、穏やかで表情豊かな楽章。美しいメロディを奏でるクラリネットが印象的です。
第3楽章 テンポ・ディ・メヌエット
優雅で軽快なメヌエット。ピアノソナタ第20番の第2楽章からの転用で、トリオでは管楽器が活躍します。
第4楽章 主題と変奏:アンダンテ
変奏に用いられる主題は民謡からの引用とされ、楽器を変えて様々に変奏されます。
第5楽章 スケルツォ
ホルンの分散和音とヴァイオリンの応答で始まる軽やかなスケルツォとチェロが流麗な旋律を奏でるトリオからなり、後のベートーヴェンを予感させる独自性があります。
第6楽章 アンダンテ・コン・モート・アッラ・マルチア - プレスト
行進曲風の厳粛な序奏に続き、チェロの伴奏に乗ってヴァイオリンが堂々とした第1主題を奏でます。第5楽章で見られたホルンの分散和音がリズムを変えて再現されたあと、ヴァイオリンとチェロが流れるような第2主題を奏でます。
展開部の終わりでは協奏曲で見られるようなヴァイオリンのカデンツァ風ソロがあり、最後は第1主題が帰ってきてベートーヴェンらしく明るく堂々と曲を閉じます。
ウィーン・フィルの黄金時代をささえた木管グループ
現在においてもウィーン・フィルは世界を代表するオーケストラではありますが、その実力の低下を多くの人が嘆いています。
もっとも、こういう物言いは、「昔はよかった」という年寄りの愚痴のような「根拠」に乏しいものが多いのです。しかし、昨今のウィーン・フィルの地盤沈下は残念ながら否定しようのない事実のようです。
では、今が落ち目ならいつがベストだったのかという話になるのですが、それもまた50年代から60年代の初め頃までと言うのがこれもまた定説のようになっています。
しかし、それもまたどこか「昔はよかった」という愚痴の域を出ないのかもしれません。聞き手は常に気楽で身勝手なものです。
しかし、その時代のウィーン・フィルを支えていたのが空前絶後と言っていいほどの木管グループだったことは事実です。
彼らが支えたウィーン・フィルは未だに田舎の名門オケであり、その土着の香りをふんだんに残していた時代の演奏が二度とよみがえらない事は事実です。
そして、多くの年寄りから見ればそのようなウィーンフィルこそが「The Best」となるのですが、客観的に冷めた目で見れば「One of the Best」なのでしょう。
とはいえ「Best」であることもまた事実です。
そして、そのウィーン・フィルを支えた木管奏者が集合してウェストミンスターに多くの録音を残したのがこの「 ウィーン・フィルハーモニー木管グループ」です。
いや、こんな持って回った言い方をしなくても、そこに結集したメンバーを見ただけでこのグループの凄さは分かります。
(オーボエ)ハンス・カメシュ、カール・スヴォボダ
(クラリネット)レオポルド・ウラッハ、フランツ・バルトシェック
(ホルン)ゴットフリート・フォン・フライベルク、レオポルド・カインツ
(ファゴット)カール・エーベルガー、ルドルフ・ハンツル
(イングリッシュ・ホルン)カール・マイヤーホッファー、ブルーノ・デールシュミット
ウェストミンスターに残した録音では演奏メンバーはほぼ変わらないのですが、フルトヴェングラーという偉大な個性によって統率された演奏があれば、指揮者というものが存在しない演奏もあります。
指揮者のいない時には、よく言えば演奏者の自発性にしたがった寛いだものになっているのですが、悪く言えば暗黙の了解にしたがった定型的な演奏になってしまっています。
それでも、これだけのメンバーがそろえば、寛いだ伸びやかな雰囲気のほうが勝っているようです。
指揮者をおかない室内オケとしてオルフェウス室内管弦楽団という組織がありました。
作品の解釈はプレーヤーの合議によって決められ、作品ごとにコンサートマスターも選ぶという「民主的」な組織というふれこみでした。
今も活動は続いているようですからそれなりに評価はされているのでしょう。
しかし、彼らの録音を聞くと、音楽には「民主主義」は似合わないと思ってしまいます。
「 ウィーン・フィルハーモニー木管グループ」の寛いだ雰囲気は「民主主義」などではない、ウィーンという町の体温が生み出したもののようです。
ただし、その体温は温かそうに見えて、その裏には世の中の裏表を知り尽くした「擦れっ枯らし」が潜んでいます。それもまたウィーンという町に対する誉め言葉と思ってください。
よせられたコメント 2025-11-14:アドラー アップロード有難うございます。こういう曲(室内楽の、しかも七重奏曲など)は聴くことがまずないのですが、この曲、試しに聞いてみたら、楽しいですね。音もとてもきれいです。案内によると名人ぞろいのアンサンブルとのことで、確かにそうだろうな、と思います。第3楽章はピアノソナタか何か? と同じ主題ですかね? でも、ピアノよりも楽しく聞いています。 2025-11-14:toshi ここのコメントでの「実力」という言葉は注意が必要な言葉と思います。単に楽譜を正確に演奏する技術なのか音楽的に演奏する技術なのか。単に楽譜を演奏するだけの技術は今の演奏家の方が昔の演奏家より上手です。
しかし、音楽的な演奏については今のウィーンフィルは、昔のウィーンフィルとは別物ですね。国立歌劇場オケの入団資格がここ30年くらいの間で度々変わっていて、50年くらい前はオーストリア国民であることが必要でしたが、今はこの制約は無くなっています。さすがに一時期いた外面東洋系の人はダメのようですが。この辺りについては、オーストリアの文化庁が関係しているので、ウィーンフィルだけでは何ともできないようです。
ウィーンフィルは多国籍オケになっていて、団員の音楽についての解釈が多様になっているので、かつてのように阿吽の呼吸というのは無くなってきていると思います。
ワルツの三拍子の取り方なんて、その典型でしょう。音楽の民主主義は正に、「船頭多くして船山に上る」ということでしょう。
ただ、独裁主義は聞いている側にとっては良いのですが、演奏する側からすると微妙でしょうね。ワルターやミュンシュのような指揮者ならオケの団員は幸せでしょうけど、クレンペラーやトスカニーニのような偏屈親父の元で音楽を演奏するオケの団員は・・・大変だったと思います。
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