クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーベン:ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110

(P)リヒター=ハーザー 1959年4月7~14日録音





Beethoven:ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110 「第1楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110 「第2楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110 「第3楽章」


嘆きの歌~疲れはて、嘆きつつ

最後の3つのソナタはミサ・ソレムニスと同時並行で作曲されたことはよく知られた事実です。
そしてこれらの作品は今までのソナタとは全く違う世界を世界をしめしています。それを一言で言えば「深い悲嘆」と「浄化」です。

そして悲嘆と言うことなら、この真ん中の「作品110」こそが、もっとも深い悲嘆に包まれた作品となっています。
とりわけ第3楽章の「嘆きの歌」と言われるように、その全体は果てしもないような深い悲しみで包まれています。それ故か、ワーグナーに代表されるように、ロマン派の作曲家たちに大変好まれた作品でした。

ピアノソナタ31番 Op.110 変イ長調

第1楽章
 モデラート・カンタービレ・モルト・エスプレッシーヴォ 変イ長調 4分の3拍子 ソナタ形式
第2楽章
 アレグロ・モルト ヘ短調 4分の2拍子 三部形式
第3楽章
 アダージョ・マ・ノン・トロッポーアレグロ・マ・ノン・トロッポ 変イ長調 4分の3拍子ー8分の4拍子 序奏ーフーガ
アダージョの大きな序奏とフーガ形式からなる「嘆きの歌」

腕のいい煉瓦職人


少し前になりますが、「恥ずかしながら、『Hans Richter-Haaser』というピアニストのクレジットを見ても「ハンス・リヒター=ハーザー」とは読めなかった。(´`)>」などと書いていましたね。まあ、それくらい私の視野に入っていなかったピアニストだと言うことです。
ただし、ファースト・コンタクトだったブラームスのコンチェルトの印象は悪くなくて「録音の良さも貢献しているのでしょうが、一つ一つの粒立ちが良くて実に冴え冴えとした響きはなかなかに魅力的です。そして、いわゆるドイツ系のピアニストのようにゴツゴツした感じが全くなくて、それとは反対の優雅な雰囲気が全体を支配しています。」と書いています。
しかしながら、ピアニストの本質はベートーベンのピアノソナタを聴かなければ分からないという「古い人間」なので、いささか意地悪な興味も伴ってこれら最晩年のソナタを聴いてみました。

結論から言えば、極めてファンタスティックな演奏だと言わざるを得ません。
ネット上の評価を散見しますと、「重厚、立派な骨格で作品を再現」とか「がっしりと堅固に構築されたドイツ風なスタイルを基調としたもの」などと書かれていますが、この録音を聞く限りは同意しかねます。おそらくは、年を経るに従って演奏スタイルが変わってい言ったのかもしれませんが、50年代の録音を聞く限りでは、そしてベートーベンの演奏においても、ゴツゴツした感じよりはそれとは反対の優雅な雰囲気が全体を支配しています。
ただし、雰囲気だけの流線型の演奏とはこれまた全く異なります。
果たして、こういう喩えが相応しいのかどうかは自信はありませんが、腕のいい煉瓦職人のような感じです。つまり、一つ一つの細部は極めて繊細にして精緻に仕上げられています。そして、そう言う一つずつの細部をこれまた実に丁寧に積み上げて、結果として実に立派な建造物を作り上げているように聞こえるのです。
ですから、まずはその「一つずつの煉瓦の仕上げの良さ」に感心させられます。その手触りの良さ見栄えの良さには録音のクオリティの高さも貢献して、実に惚れ惚れとさせられます。しかし、リヒター=ハーザーの素晴らしさは、そう言う細部の素晴らしさに感心させられながら、最後に気がつくと実に立派な建築物に仕上がっているという事です。

ただ、惜しむらくは、録音ではこれほどまでに「いい仕事」をしているのに、実演になると結構荒っぽかったらしいのです。そのあたりが、常に高いレベルの演奏を維持していたバックハウスなどとの違いだったのかもしれません。

よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-04-30]

ショパン:ノクターン Op.37&Op.48(Chopin:Nocturnes for piano, Op.37&Op.48)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

[2025-04-27]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第6番 ヘ長調(Rossini;Quatuor No.6 in F major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-25]

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1962年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1962)

[2025-04-22]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第5番 ニ長調(Rossini;Quatuor No.5 in D major )
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-19]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1951年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1951)

[2025-04-16]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590(プロシャ王第3番)(Mozart:String Quartet No.23 in F major, K.590 "Prussian No.3")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2025-04-12]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第4番 変ロ長調(Rossini;Quatuor No.4 in B flat major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-09]

ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27(Rachmaninoff:Symphony No.2 in E minor, Op.27)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月15日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 15, 1945)

[2025-04-06]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第1番 ヘ長調(Rossini;Quatuor No.1 in F major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-02]

モーツァルト:セレナーデ第13番ト長調, K.575 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(Mozart:Serenade in G Major, K.525 "Eine kleine Nachtmusik")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

?>