J.S.バッハ:アンナ・マグダレーナ・バッハの為の音楽帳(A面)
(Cembalo)グスタフ・レオンハルト:(S)エリー・アーメリング (Br)ハンス=マルティン・リンデ (Viola da Gamba)ヨハネス・コッホ (Cello)アンゲリカ・マイ (Or)ルドルフ・エヴァーハルトテルツ少年合唱団 1966年録音
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [1.Polonaise G-Moll, BWV Anh. 119,Marsch Es-Dur, BWV Anh. 127,Menuett G-Dur, BWV Anh. 114]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [2.Polonaise G-Moll, BWV Anh. 119]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [3.Marsch Es-Dur, BWV Anh. 127]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [4.Menuett G-Dur, BWV Anh. 114]]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [5.Aria Di Giovannini "Willst Du Dein Herz Mir Schenken", BWV 518]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [6.Rondeau B-Dur, BWV Anh. 183]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [7.Bist Du Bei Mir, BWV 508]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [8.Aria G-Dur (Aus den Goldberg-Variationen), BWV 988,1]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [9.Erbauliche Gedanken Eines Tobackrauchers: So Oft Ich Meine Tobackspfeife, BWV 515]
J.S.Bach:Notenbuchlein Fur Anna Magdalena Bach [10.Marsch G-Dur, BWV Anh. 124]
バッハ一家の音楽会の様子を写し取ったのかも
「アンナ・マグダレーナ・バッハの為の音楽帳」は、その成立過程に関してはいろいろな説が出されてきました。
新妻であるアンナ・マグダレーナに贈ったというのが有力なのですが、マグダレーナの学習用のために作られたという説もあります。しかし、難易度の著しく異なる作品がランダムに並んでいるので、それは学習用としてはおかしいだろうと言うことになり、それではマグダレーナと息子たちのための学習用ではないか言う説が出されたりもしたのですが、それもどうやら問題が多いようです。
と言うことで、基本的には新妻であるマグダレーナへのバッハからのプレゼントと言うことで落ちついているのですが、最近の研究では、どうやらバッハ以外の作品もまじっていることが分かってきて、どうやら単純なプレゼントでもなさそうなのです。
そこで、最近のもっとも有力な説は、最初の部分だけをバッハが作曲した作品を書き込んで、その後の余白部分にマグダレーナが夫であるバッハや同時代の作曲家の作品を時々に応じて書き足していったいったのではないかというものです。また、非常に簡素な作品も含まれているので、それは、おそらくは息子のエマヌエルの作品ではないかとも言われています。
マグダレーナは子だくさんのバッハ一家を支えただけでなく、音楽的にもすぐれたソプラノ歌手であり、夫であるバッハの音楽を理解する能力も持っていました。また、写譜の技術も傑出していて、バッハ自身の写譜とほとんど区別がつかないほどで、今もバッハ学者を悩ませているようです。さらには、彼女が加わることで、バッハの家庭内の音楽会も充実したものとなり、バッハ自身の創作活動にも大いに寄与しました。
そう言う意味では、これはある意味ではバッハ一家の家庭内での音楽会の様子を写し取ったものといえるかもしれません。
そして、ここに収められている幾つかの作品を萌芽として、後のバッハの偉大な作品が生み出されたことに気づくはずです。
どんな響きが好きかということです。楽譜に書いてあるわけではない。
グスタフ・レオンハルトという名前は私の中ではピリオド演奏と強く結びついています。ですから、彼のよい聞き手とは到底言えません。
しかし、ピリオド演奏という演奏様式が一つのムーブメントとなり、モダン楽器の演奏では表舞台に登場できなかったような人たちが「ピリオド演奏」を旗印に雨後の筍のように登場してきたような連中とは根本的に異なることくらいは理解しています。
彼は楽器は文字通り道具にほかならず、作曲家の表現形態と無関係に存在すると語っていました。つまりは、ピリオド楽器を使いさえすればピリオド演奏になると言う単純なものではないと言うことです。
楽器からどの様な音が紡ぎ出されるのかを知っているのは作曲家だけであり、それをシルのは「知性」ではなくてインスピレーションだとも語っています。
ですから、レオンはルトの演奏の特徴としてチェンバロの右手と左手の音を微妙にずらす入り方がよく指摘されます。それについても、かれは「テイスト」だと語り、つまりは「どんな響きが好きかということです。楽譜に書いてあるわけではない。」と開き直っています。(^^;
これは実に面白い話ですね。
つまりは、彼は疑いもなくピリオド演奏の先駆者でありながら、ガチガチの「原理主義者」とは最も遠い位置にいたのです。
おそらく、ピリオド演奏というスタイルがこのようなスタンスで発展していけば、クラシック音楽の世界も随分と異なったものになったことでしょう。
そして、そう言うレオンはルトだからこそ、これは実に愉快な一枚になっています。
当然の事ながら、彼の音楽は分厚い響きよりは薄めの響きで各声部をクッキリ描き出していますが、それは実に洒落た雰囲気を失うことがありません。それは、まるでバッハ一家の家庭内での音楽会の様子を追体験するような選曲が為されているあたりの洒落っ気ともよく似ています。
「アンナ・マグダレーナ・バッハの為の音楽帳」と言えばクラブサン曲だけが抜き出されることが多いのですが、ここでは声楽曲も合唱曲も選ばれています。
おかげで、若きエリー・アーメリングの歌声も聞くことができます。
なお、レオンはルトの選曲は以下の通りです。
ポロネーズ ト短調BWV Anh.119
マーチ変ホ長調BWV Anh.127
メヌエット ト長調BWV Anh.114|ト短調BWV Anh.115
ジョヴァンニーニのアリア「あなたの心を下さるのなら」変ホ長調BWV518
ロンド変ロ長調BWV Anh.183
アリア「御身がそばにあるならば」変ホ長調BWV508
クラヴィーアのためのアリア ト長調BWV988-1
アリア「喫煙者の教訓」ト短調BWV515a
マーチ ト長調BWV Anh.124
アルマンド ニ短調BWV812-1
コラール「汝に向かって,エホバよ,私は歌おう」変ロ長調BWV299
前奏曲ハ長調BWV846-1
メヌエット ト長調BWV Anh.116
マーチ ニ長調BWV Anh.122
ミュゼット ニ長調BWV Anh.126
レチタティーヴォ「私は満ち足りている」BWV82-2|アリア「眠れ,疲れし眼よ」BWV82-3
コラール「ただ神の御身に委ねる者は」イ短調BWV691
コラール「おゝ永遠よ,汝おそろしき言葉」ヘ長調BWV513
こういういろんなジャンルのまじった作品は分類に悩むのですが、取りあえずは「器楽曲」の中に入れておきます。
よせられたコメント 2022-02-03:yk アンナ・マグダレーナ・バッハにレオンハルト・・・と聞くと、1967年の映画「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」(ジャン=マリー・ストローブ監督)を思い出しますね。妻の目を通して語られるバッハの生涯・・・と言う体裁の映画でしたが、モノクロ―ム画面の禁欲的で静謐な語り口の印象的な映像作品で、レオンハルトが実際バッハ役で出演し演奏も担当していました。
映画とこの「音楽帳」の録音は必ずしも関係は無いようですが、映画にはケーテン候としてアーノンクールも出演しいて、制作年が近いことを見ると当時の古楽器演奏界の雰囲気を伝えているようでもあり興味深い。そのアーノンクールも自分が指揮者を志した切っ掛けを「入院した病院のラジオで聴いたフルトヴェングラーの演奏だった」・・・と回想していましたが、この録音も映画共々(一部の?)”古楽器演奏”が”ピリオド”を名乗り伝統的な演奏を”誤り”として攻撃する手段としてノン・ビブラートを声高に叫んでドグマティックな運動に変容していく直前の良き時代の記録でもあるようです。
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