シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 「死と乙女」
カルヴェ弦楽四重奏団 1937年5月7&8日録音
Schubert:弦楽四重奏曲第14番 「第1楽章」
Schubert:弦楽四重奏曲第14番 「第2楽章」
Schubert:弦楽四重奏曲第14番 「第3楽章」
Schubert:弦楽四重奏曲第14番 「第4楽章」
緊密で劇的緊張にあふれた作品です。
この作品には「死と乙女」という標題がつけられていますが、それは彼のリート作品「死と乙女」が引用されているためです。
歌曲「死と乙女」はよく知られているように、死へと誘う悪魔のささやきと、それに抗する乙女の言葉から成り立っています。そのために、この作品をシューベルト自身の死生観が表明されたものだという見方があります。
もちろんそう言う面は否定できませんが、それだけでこの作品を見てしまうと誤ることになります。
虚心坦懐に耳を傾ければ分かることですが、この作品は他の四重奏曲と比べると異質の存在です。
それは前作となる第13番「ロザムンデ」と比べてみれば明らかです。この上もなくメランコリックな叙情性にあふれていて、歌そのものが作品を支配しています。私たちが思い浮かべるシューベルトの姿に最も相応しいのはロザムンデの方です。
ところが、この「死と乙女」はそれとは対照的にベートーベンの弦楽四重奏曲を思わせるような緊密で劇的な構成が特徴となっています。それはシューベルトが述べたように「交響曲への道」を目指すものでした。
第2楽章のあまりにも美しいメロディに幻惑されてはいけません。
第1楽章で主題動機が徹底的に展開される様子はまったく持ってベートーベン的です。第3楽章の荒々しいスケルツォも同様です。
シューベルトは数多くの弦楽四重奏曲を残しましたが、歌心にあふれたシューベルト的な美質と、ベートーベン的な構築がこれほどまでに見事に結合した作品は他には見あたりません。
録音は最上です!!
第2楽章は歌を紡いでほしいが、それだけに流れたのではこの作品の本質を見失ってしまいます。かといって劇的な緊張感だけで全曲をがっちりと演奏したのではどこかに物足りなさを感じてしまいます。
そう言う意味では演奏する側にとっては結構難しい作品だといえます。
カルヴェ弦楽四重奏団は戦前を代表するカルテットですが、今日ではその存在はほとんど忘れられてしまっています。演奏を聴いてみるとこの作品の持つ交響曲的な広がりはほとんど感じ取れず、実にこぢんまりとした演奏になっています。
昨今のハイテクカルテットを聴いてきた耳からはかなり物足りなさを感じることは事実です。
言葉は悪いですが、「きわめて上質なホームコンサート」という感じです。
ただし録音の良さには目を瞠ります。戦前のテレフンケンの録音ですが、ドイツの技術の高さには改めて感服させられます。
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