ベートーベン:ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番 ヘ長調 Op.50
(Vn)メニューヒン フルトヴェングラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1953年4月9日録音
Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.2 in F major, Op.50
実に耳に入りやすい作品
ベートーベンにとってこの「ロマンス」と題されたオーケストラとヴァイオリンのための音楽は得意な位置を占めています。それは、彼がこのような協奏的な小品をほとんど書いていないからです。
また、作品50のヘ長調は、ベートーベンには珍しいほどに旋律重視の作品で、その意味でも特異なポジションを占めていると言えます。作品40のト長調の方はメロディよりは和声を軸とした構成感があるのでベートーベンらしい作品とも言えます。
しかし、世間の人は美しいメロディラインの方が好きなのであって、それはベートーベンの作品に対しても同じで、人気の点ではヘ長調の方に軍配が上がります。
おそらく、この冒頭のメロディはクラシック音楽などに全く興味のない人でも、一度や二度はどこかで耳にしたことがあるでしょう。
作品の構成は両方とも典型的なロンド形式(A-B-A-C-A-コーダ)で書かれているので、実に耳に入りやすい作品です。
話題にならない録音
驚くほど話題にならない録音です。ですから、私も今の時期にいたるまでサイトにアップするのを忘れていました。
「フルトヴェングラー」とタグが付けば、どれほどに音質の貧しいものであろうとそれなりに話題に上がるだけに、不思議と言えば不思議な話です。
ただ、聞いてみて、なるほどと納得することが幾つかありました。
まずは、この作品のオケの編成がかなりシンプルだと言うことです。弦楽5部にフルート・オーボエ・ファゴット・ホルンがそれぞれ2本だけなので、最初のピアノ協奏曲だった第2番と同じではないでしょうか。ですから、ともすれば「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス」という名称にもかかわらず、ヴァイオリニストの方に主導権があるときは「オーケストラ助奏付きのヴァイオリンのためのロマンス」みたいになってしまうことがあるのです。
既に紹介してある音源では、
ハイフェッツとウィリアム・スタインバーグとの組み合わせなどはその典型でした。
逆に、「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス」と言う名にふさわしく、オケとヴァイオリンがしっかりと拮抗して音楽を作り上げているのが
コンヴィチュニーとイーゴリ・オイストラフとの録音でした。
ここではフルトヴェングラーとメニューヒンという組み合わせなので、間違っても「オーケストラ助奏付きのヴァイオリンのためのロマンス」みたいな感じになることはないと誰しもが思います。いや、普通はコンヴィチュニーとイーゴリ・オイストラフとの録音以上にオケがうねってくれることを期待するのが通常のフルヴェンファンです。
ところが、どうしたわけか、ここでのフルトヴェングラーはきわめて抑制的なのです。
ハイフェッツをサポートしたスタインバーグほどではないのですが、それでもヴァイオリンの響きを邪魔しないようにかなり抑制的にオケを鳴らしています。
この録音は1953年の4月にヴァイオリン協奏曲をメインとしたセッションの中で録音されました。
1953年4月7日と8日の2日間でヴァイオリン協奏曲を録音し(調べてみたら、この録音もアップしていないことに気づきました)、その翌日の4月9日のこの二つのロマンスが録音されています。聞くところによると、ロマンスの2曲はともに「一発録り」だったそうです。
そして、特徴的なのは、メインのヴァイオリン協奏曲の方でも、何故かフルトヴェングラーは抑制的なのです。ここでのフルトヴェングラーは明らかにオケとソロヴァイオリンのバランスを考えて抑制的に振る舞っています。
伝えられる話によると、戦後の録音活動の中で自分の演奏のプレバックを聞くという経験の中で、一度限りの実演と、繰り返し聞かれることを前提とした録音という行為の違いに気づきはじめたそうです。それが結果として、あまりフルトヴェングラーらしくない演奏になってしまったのかもしれません。
ただし、ベートーベンのロマンスを聞くための演奏としてならば決して悪い演奏ではありません。
フルヴェンファンにとっては納得のいく演奏ではないでしょうが、録音のクオリティも高く、メニューヒンのたおやかな美音を捉えていて、ここまで無視されるほど悪い演奏ではありません。
よせられたコメント
2023-06-20:クライバーファン
- 2番の方は1番と違って、それほどヴァイオリンの調子は悪くないようです。時に音が揺れますが。
メニューインは音がだんだん安定しなくなっていったようですね。上手くいったときの音時代はとても美音だとは思います。
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