エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)
Elgar:Cockaigne Overture, Op.40
ロンドン市民の活気とロマンティシズム
活気あふれるエドワード朝時代のロンドンを音楽で描写した演奏会用序曲で、正式名称は「コケイン(首都ロンドンにて)」(Cockaigne (In London Town)) といいます。
明るく、ユーモラスで、力強い、ロンドン市民の活気とロマンティシズムを描写しています。
「コケイン」というのは中世フランス語の「pais de cocaigne」(満ち足りた土地)に由来し、中世の理想郷を意味します。序曲「フロワッサール」といい、この「コケイン」序曲にしろ、エルガーには中世へおあこがれが強かったのでしょうか。
ただし、20世紀初めのころは「コケイン」という言葉はロンドンをユーモラスに表現する俗称として使われていたらしいので、そこまでの関連はないのかもしれません。
序曲は、大都市ロンドンの喧騒を描写する忙しいテーマで始まります。このテーマは「市民のテーマ」と呼ばれることもあります。
活発なオープニングの後、よりゆったりとした「高貴に(nobilmente)」という指示のある主題が現れます。これは、ロンドンの偉大な歴史とロンドンっ子の誠実な人柄を表現しているとされます。
やがて、恋人たちのロマンスや軍楽隊の行進、教会の情景が描かれ、再び街の活気のあるテーマが戻ってクライマックスを迎えて終わります。
この音符を愛してください
生粋のイギリス人指揮者というのは、なんだかイギリスの作曲家の作品を演奏し録音する事が一つの義務のようになっているように見えてしまいます。なかにはビーチャムとディーリアスとか、ボールトとヴォーン・ウィリアムズのように、分かちがたく結びついているような組み合わせもあります。
そして、イタリア系のイギリス人であったバルビローリにもそのことが言いえて、実に幅広くイギリスの作曲の作品を録音しています。とりわけエルガーの作品には強い愛着があったようで、同じ作品を何度も繰り返して録音をしています。
考えてみれば、イギリスは長く音楽の消費国でした。おそらく17世紀のパーセル以降、世界的に知られるような作曲家は長くあられませんでした。その空白は20世紀近くなってエルガーが表舞台に登場するまで続いたと言ってもいいでしょう。
もちろん、その間にヘンデルやハイドンもロンドンで活躍したのですが、彼らをイギリスの作曲家と呼ぶのはふさわしくないでしょう。
そして、エルガーが登場してから、ディーリアスやボーン・ウィリアムズ、ホルストなどが登場するのですが、やはり今一つマイナーです。その後登場したブリテンにしても「イギリス20世紀音楽の父」といわれたのですから、やはりどこか狭い範囲にとどまっています。
しかし、そういう音楽家の作品が私たちの耳に数多く届いているのは、ひとえにイギリスの偉大な指揮者たちが彼らを積極的にコンサートで取り上げ、録音し続けてくれたからでしょう。
そう考えれば、日本のオーケストラや指揮者はもう少し日本の作曲家の作品に理解があってもいいのではないかと思われます。
それにしても、バルビローリがイギリスの作曲家、とりわけエルガーを熱心に取り上げていたのは注目に値します。
ふつうは一つの作品を生涯に2度から3度取り上げていれば多いほうでしょう。しかし、バルビローリはエルガーの数多くの作品を2度から3度取り上げているのは普通のことであって、私の知る限りでは「序奏とアレグロ」などは6回も録音しています。
そして、これもまた他のイギリスの指揮者と同じ傾向だと思うのですが、イギリスの指揮者が取り上げなくても大陸側の指揮者が取り上げてくれるような作品にはそれほど熱心ではありません。典型はホルストの「惑星」でしょうが、エルガーといえば名刺代わりとも言うべき「威風堂々」などはおそらく一回だけしか録音していないはずです。
長大な二つの交響曲でも何度か録音していているバルビローリなのですから、ビジネス的には極めてアンバランスと言わねばなりません。
しかし、その音楽的献身ゆえにグラモフォン誌が世紀末に行ったアンケートでも、20世紀の最も偉大な指揮者としてフルトヴェングラーに続いて堂々の2位に食い込んだのかもしれません。
さて、問題は、そういうバルビローリの数多いエルガー作品の録音をどのようにして取りげるべきかです。
同じ作品を6回録音しているからそのすべてを紹介するのはいかがなものかとも思ったのですが、かといって私ごときの個人的なバイアスで選択して紹介するというのもおこがましい話です。
「この音符を愛してください。」とバルビローリは常にオーケストラプレイヤーに語りかけていたそうです。エルガーとバルビローリと言えば定番中の定番とも言うべき組み合わせですが、その演奏を聴くたびにこのバルビローリの言葉が思い浮かびます。そんなバルビローリの思いを前にすれば可能な範囲で数多く紹介すべきなのでしょう。
まずは、あまり同じ作品が重ならないように、少しずつバルビローリのエルガーを紹介していきたいと思います。
よせられたコメント 2025-09-29:アドラー この曲、名前も知りませんでした。この指揮者とオーケストラによるエルガーの小品は他の作品もそうですが、きれいな音で新鮮なリズム感があって、耳に心地よいです。威風堂々1番に似たフレーズもありますが、初めて聞く新鮮さからなのか、私にはこちらの方が耳に心地よいです。
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