ドビュッシー:海~管弦楽のための3つの交響的素描(Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 1959年5月2日~3日録音(Igor Markevitch:Concerts Lamoureux Recorded on May 2-3, 1959)
Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques [1.De l'aube a midi sur la mer]
Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques [2.Jeux de Vagues]
Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques [3.Dialogue du Vent et de la Mer]
ドビュッシーの管弦楽作品を代表する作品
「牧神の午後への前奏曲」と並んで、ドビュッシーの管弦楽作品を代表するものだと言われます。
そう言う世間の評価に異議を唱えるつもりはありませんが、率直な感想としては、この二つの作品はたたずまいがずいぶん違います。
いわゆる「印象派」と呼ばれる作品ですが、この「海」の方は音楽に力があります。
そして曖昧模糊とした響きよりは、随分と輪郭線のくっきりとした作品のように思えます。
正直申し上げて、あのドビュッシー特有の茫漠たる響きが好きではありません。
眠たくなってしまいます。(^^;
そんな中でも聞く機会が多いのががこの「海」です。
作曲は1903年から1905年と言われていますが、完成後も改訂が続けられたために、版の問題がブルックナー以上にややこしくなっているそうです。
一般的には「交響詩」と呼ばれますが、本人は「3つの交響的スケッチ」と呼んでいました。
作品の雰囲気はそちらの方がピッタリかもしれません。
描写音楽ではありませんが、一応以下のような標題がつけられています。
「海の夜明けから真昼まで」
「波の戯れ」
「風と海との対話」
楽曲構造をさらけ出す
ドビュッシーの「海」という作品はつくづく不思議な音楽です。
ドビュッシーと言えばすぐに思い浮かぶのはその茫漠たる響きです。それは、今まで、どの作曲家も聞いたことのない響きであり、その事によって、行き着くところまで行き着いた後期ロマン派の袋小路から抜け出す細道を見いだしたとも言えます。そして、個人的なことで言えば、そのつかみ所のない響きが長年どうにも苦手で、何とはなしに敬遠していた作曲家でした。
ところが、不思議なことに、そう言う音楽の有り様とは相性が良くなさそうに見えるトスカニーニやセルは積極的にこの作品を取り上げているのです。
特に、トスカニーニはこの作品を名刺がわりのようにコンサートで取り上げていたようですし、セルもまた、ただ一度限りとなった来日公演のプログラムに組み込んでいます。そして、その演奏の特徴は、その茫漠たる響きではなくて、そう言う響きを生み出す楽曲の構造をこの上もない精緻さで明らかにしようとするものでした。
そして、そう言う方向性での演奏の一つの到達点とも言えるのが、このマルケヴィッチの録音かもしれません。
それにして、長年にわたってのんびりとしたぬるま湯につかっていたラムルー管を率いて、よくぞここまで仕上げたものだと感心せずにはおれません。この作品の録音は1959年ですから、彼が首席指揮者に就任して2年足らずの録音です。
驚くべき変貌ぶりです。
それにしてもと言うか、何故にというか、何を間違えてラムルー管はマルケヴィッチを首席奏者に招いたのでしょうか。
マルケヴィッチがラムルー管を率いたのは1957年から1961年までの4年間です。
その間にベルリオーズの幻想交響曲やベートーベンの交響曲などを録音しているのですが、そのどれもが後世に残る素晴らしい演奏でした。
普通ならば、そのままマルケヴィッチを首席指揮者として活動を続けていくのが当然なのでしょうが、それは過酷なまでに厳しいリハーサルとバーター関係でした。そして、長年ぬるま湯につかっていたラムルー管のメンバーにしてみれば、そのバーター関係で切り捨てたのは厳しいリハーサルだったのです。
それにして、この録音ほどに「海」と言う作品の仕組みが明らかになっている演奏はそうそう思い当たりません。
ラムルー管もやる気になって死力を振り絞ればこれだけの演奏が出来たということは、人間というのは意外と己の限界を最初から決めすぎてしまう生き物なのかもしれません。
とは言え、限界に挑戦し続けて頑張れるのは、限られた期間だけと言うことなのでしょう。
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