ワルトトイフェル:スケートをする人(スケーターズ・ワルツ) 作品183
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1945年6月28日録音
Waldteufel:Skater's Waltz, Op. 183
通俗音楽というレッテルを貼られても、今もなお演奏される作品が残るというのは凄いことです
作曲家としてはほとんど忘れ去られた存在ですが、この「スケートをする人」や「女学生」などは今もってそれなりの知名度を維持しています。
フランスのアルザス地方に生まれたワルトトイフェルは、同じ時代に活躍したJ.シュトラウスと同じように楽団を指揮して数多くのワルツを作曲しました。
しかし、シュトラウスとくらべるとたおやかで優美であっても、音楽に込められたパワーのようなものが不足していることは一聴して明らかです。そのために、人々がワルツにあわせて踊り明かす時代が終焉すると彼の作品も忘れ去られていきました。
しかし、その作品の全てが歴史の淘汰によって消え去っていく凡百の作曲家とくらべれば、通俗音楽というレッテルを貼られていようと、今もなお演奏される作品が残るというのは凄いことであり、幸せなことだと言えます。
ちなみに、「女学生」という日本語のタイトルは全くの勘違いだったようです。
原題はスペイン語による「Estudiantina waltz」というもので、英訳では「Band of Students Waltz」となっています。これは「女学生」よりははるかにましですが、それでもニュアンス的にはいささか乖離があるようです。
昔のスペインには、貧乏学生を中心としたマンドリンやギターによる楽団があり、彼らは伝統的な衣装を身にまとって町に繰り出しては施しをもらい勉学の費用に充てるという習慣があったようです。
その楽団のことを「Estudiantina」と言ったのですが、どうやらそれを「estudiante(学生)」という名詞の女性形だと勘違いして「女学生」と訳したようなのです。
ただし、音楽の雰囲気からいってもそれは「絶妙なる誤訳」だったと言えます。
また「スケートをする人」は日本では「スケーターズ・ワルツ」として知られていて人気があるのですが、ヨーロッパではそれほどの認知度はないようです。
ただし、カラヤンは何故かこの作品が好きだったようで録音も残していますし、あのトスカニーニも素晴らしい録音を残しています。
確かこの御大二人は「女学生」は録音していないと思いますので、日本人の感性も馬鹿にしたものではないのかもしれません。
19世紀のパリの上流社会ではワルツと同様にスケートが大流行していて、そこに商機を見つけたワルトトイフェルがスケートをする人々のワルツを思いついたのでしょう。
この作品の魅力は、冒頭のホルンによる牧歌的なメロディに集約されていて、後はこの旋律を基軸にジャンプする姿や鈴をつけて滑走するワルツが絡まっていきます。
真っ向からその眉間を真っ二つにたたき割るような演奏
バルビローリ指揮によるレハールの「スケートをする人(スケーターズ・ワルツ)」を紹介したときに、カラヤンとトスカニーニという御大二人も「スケートをする人」を録音している事についてふれました。
ところが、そのトスカニーニ盤はアップしていないことに気づきましたので、忘れないうちに紹介しておきます。
いやぁ!それにしても凄まじい「スケーターズ・ワルツ」です!!
人によってはこれを「純音楽的表現」と言われるのですが、そして、その事には何の疑いもないのですが、この演奏にはそう言う上品な表現を突き抜ける「凄み」があります。
この作品は日本では不思議なほどに人気があるのですが、それは「ライト・クラシック」という位置づけをこえるものではありません。
しかし、ここでのトスカニーニにはそう言う思いはなかったようで、真っ向から挑みかかるような指揮ぶりです。
「鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん」という言葉がありますが、こういう演奏を聞かされると、トスカニーニはこの作品を「鶏」だとは思っていなかったことがよく分かります。
それと比べれば、カラヤンやバルビローリの演奏はそこまでムキにはなっていません。
しかし、つまらぬ「小品」と思っていないことも事実で、この上もなく優美な歌い回しが魅力的です。
それに対して、トスカニーニの方は真っ向からその眉間を真っ二つにたたき割るような演奏なのです。
人よってはトンでも演奏と言われるかもしれないのですが、それもまた楽しからずやです。
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