R.コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 作品35
ウィリアム・スタインバーグ指揮 ピッツバーグ交響楽団 1955年1月11日録音
Rimsky-Korsakov:Scheherazade, Op.35 [1.The Sea and Sinbad's Ship]
Rimsky-Korsakov:Scheherazade, Op.35 [2.The Legend of the Kalendar Prince]
Rimsky-Korsakov:Scheherazade, Op.35 [3.The Young Prince and The Young Princess ]
Rimsky-Korsakov:Scheherazade, Op.35 [4.Festival at Baghdad. The Sea. Ship Breaks against a Cliff Surmounted by a Bronze Horseman]
管弦楽法の一つの頂点を示す作品です。
1887年からその翌年にかけて、R.コルサコフは幾つかの優れた管弦楽曲を生み出していますが、その中でももっとも有名なのがこの「シェエラザード」です。彼はこの後、ワーグナーの強い影響を受けて基本的にはオペラ作曲家として生涯を終えますから、ワーグナーの影響を受ける前の頂点を示すこれらの作品はある意味ではとても貴重です。
実際、作曲者自身も「ワーグナーの影響を受けることなく、通常のオーケストラ編成で輝かしい響きを獲得した」作品だと自賛しています。
実際、打楽器に関しては大太鼓、小太鼓、シンバル、タンバリン、タムタム等とたくさんでてきますが、ワーグナーの影響を受けて彼が用いはじめる強大な編成とは一線を画するものとなっています。
また、楽曲構成についても当初は
「サルタンは女性はすべて不誠実で不貞であると信じ、結婚した王妃 を初夜のあとで殺すことを誓っていた。しかし、シェエラザードは夜毎興味深い話をサルタンに聞かせ、そのた めサルタンは彼女の首をはねることを一夜また一夜とのばした。 彼女は千一夜にわたって生き長らえついにサルタンにその残酷な誓いをすてさせたの である。」
との解説をスコアに付けて、それぞれの楽章にも分かりやすい標題をつけていました。
しかし、後にはこの作品を交響的作品として聞いてもらうことを望むようになり、当初つけられていた標題も破棄されました。
今も各楽章には標題がつけられていることが一般的ですが、そう言う経過からも分かるように、それらの標題やそれに付属する解説は作曲者自身が付けたものではありません。
そんなわけで、とにかく原典尊重の時代ですから、こういうあやしげな(?)標題も原作者の意志にそって破棄されるのかと思いきや、私が知る限りでは全てのCDにこの標題がつけられています。それはポリシーの不徹底と言うよりは、やはり標題音楽の分かりやすさが優先されると言うことなのでしょう。
抽象的な絶対音楽として聞いても十分に面白い作品だと思いますが、アラビアン・ナイトの物語として聞けばさらに面白さ倍増です。
まあその辺は聞き手の自由で、あまりうるさいことは言わずに聞きたいように聞けばよい、と言うことなのでしょう。そんなわけで、参考のためにあやしげな標題(?)も付けておきました。参考にしたい方は参考にして下さい。
第1楽章 「海とシンドバットの冒険」
第2楽章 「カランダール王子の物語」
第3楽章 「若き王子と王女」
第4楽章 「バグダッドの祭り、海、船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲」
スタインバーグらしい隅から隅まで注意の行き届いた端正な演奏
LPレコードのジャケットというのは、SP盤とは異なるLP盤故の「特性」のために「発明」されたものでした。
まず、何とってもLP盤はSP盤よりははるかに細かい溝が刻まれていて、その溝をカートリッジがトレースするのですから埃は大敵です。それに対して、SP盤は「落とすと割れる」という深刻な課題は抱えていましたが埃に対しては無頓着でした。
袋に穴を開けてレーベル面が確認できるようになっていて、埃には無頓着です
この写真のように、レーベル面が見えるように穴の空いた紙袋に放り込んで終わりというのが普通でした。
レーベル面が見えるように穴を開けているのは何が録音されているかを確認するためなのですが、そこから埃が入って困るという考えは全くなかったようです。
しかし、LP盤の場合は埃は大敵ですから、ボール紙で出来た収納袋に入れるという方法が考案されました。その後、さらに密閉性を高めるために紙やポリエチレンで出来た中袋に入れてから収納袋に入れるという「2段階」の方法が一般化します。
この時に問題になったのは、SP盤の時はレーベル面が見えるように収納袋に穴を開けておけば「何が録音されているのか」は簡単に確認できたものが、収納袋や中袋に密閉されているLP盤では取り出さないとレーベル面が確認できなくなったことです。
そこで、この「不便」を解消するために収納袋に必要な情報を印刷すればいいと言うことになって、「レコードジャケット」と呼ばれるものが登場したのです。
ですから初期の頃は極めてシンプルなものが大部分でした。
LP盤がはじめて世に出たときは以下のように、必要最低限の情報が素っ気なく記入されているだけでした。
Columbia Masterworks ML 4004 (1948年)
これは1948年にColumbiaがPR用にリリースしたレコードのジャケットですが、「Beethoven Concerto No. 5 In E-Flat Major For Piano And Orchestra, Op. 73 "Emperor"」という作品名と「Rudolf Serkin,Piano with Bruno Walter Conducting the Philharmonic-Symphony Orchestra Of New York]」という演奏家が記されているだけです。
しかし、LP盤のリリースに遅れをとったRCAはその翌年には次のようなジャケットにLP盤を収納して発売するようになります。
既にこの時点で文字情報は後景に一歩下がり、ユーザーの目を引くデザインとしての一歩を踏み出していることが分かります。
RCA Victor Red Seal WDM 1313 (1949年)
もちろん、Columbiaも負けてはならじと少しはデザインを意識したジャケットをリリースするようになります。ただし、間に合わせで慌ててデザインしたという感じは否めません。
Columbia Masterworks ML 2059(1949年)
そして、それを受けてRCAは音楽とよりマッチングしたデザインを打ち出してきます。これはイタリアで発売したときのジャケットです。
RCA Italiana LM-1042(1950年)
こうして、レコードのジャケットは「ジャケ買い」という言葉が生まれるほどの存在へと成長していくのです。
それだけに、レコードからCDへとソフトの形態が変わったときに何が一番つまらなかったかと言えば、この「ジャケットの文化」が終わってしまったことです。
30センチメートル四方と12センチメートル四方では面積にして6倍以上の差がありますから、そこで出来ることには根本的な違いが出てしまいます。
もっとはっきり言ってしまえば、レコードジャケットとしてやれるレベルを基準とすれば、12センチメートル四方では何も出来ないといわざるを得ないのであって、その出来ない現実が12センチメートル四方の世界をより貧弱なものにしていったのです。
このスタインバーグ&ピッツバーグ響によるシェエラザードも、中味だけでなくてこのジャケットだけで買い込んだ人も随分いたのではないでしょうか。
今となってはほとんど話題になることもない録音なのですが、このジャケットは結構インパクトがあります。
もちろん、スタインバーグらしい隅から隅まで注意の行き届いた端正な演奏は決して悪くはないのですが、このジャケットから期待される妖艶な雰囲気は全くないのが残念です。
ソロ・ヴァイオリンが演じる美女も楚々とした清潔感あふれる女性です。
それはそれで悪くはないのですが、ジャケ買いした人はなんだか騙されたような気分になったのではないでしょうか。
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