ワーグナー:ジークフリート牧歌
ワルター指揮 ウィーンフィル 1935年録音
Wagner:ジークフリート牧歌
階段の音楽
この作品の誕生に関わるエピソードはあまりにも有名です。
ジークフリート牧歌は、1870年、晴れて自分の妻となったコジマへの誕生日プレゼントとして創作されました。しかし、コジマの誕生日までそのプロジェクトは極秘であり、練習も家族に知られないように行われたと言います。
そして、誕生日当日の朝、コジマは美しい音楽で目をさますことになります。階段に陣取った17名の演奏家とワーグナーによる彼女へのプレゼントが同時に世界初演となったわけです。
そして、音楽が終わると、ワーグナーはうやうやしく総譜をコジマに手渡したと言います。
なかなかやるもんです。
そして、コジマと子供たちはこの作品を「階段の音楽」と呼んで何度も何度もアンコールしたと言うエピソードも伝わっています。
こういうお話を聞くとワーグナーってなんていい人なんだろうと思ってしまいます。しかし、事実はまったく正反対で、音楽史上彼ほど嫌な人間はそういるものではありません。(-_-;)おいおい
ただ、コジマとの結婚をはたし、彼女とルツェルンの郊外で過ごした数年間は彼にとっては人生における最も幸福な時間でした。そして、その幸福な時代の最も幸福なエピソードにつつまれた作品がこのジークフリート牧歌です。
それ故にでしょうか、この作品はワーグナーの作品の中では最も幸福な色彩に彩られた作品となっています
こういうのを聴くと、つくづくと人格と芸術は別物だと思わせられます。
戦前を代表する名演
ワルターはこの作品がお気に入りだったようで何度も録音をしています。その中でも、ここで聴くことのできる1935年の録音は戦前のSP盤時代の名演でした。
ウィーンフィルがまさにウィーンフィルだった時代の素晴らしい演奏です。ポルタメントを多用した弦の響きは言うまでもなく、木管群の音色もまさにウィーンそのものです。今日では聴くことのできない演奏スタイルだけにその価値は将来にわたって減じることはないでしょう。
ただし、全体の造形は意外としっかりとしていることには注目しておいた方がいいでしょう。そう言う基本がしっかりしているからこそ、細かい「崩し」が活きてくるというのがワルターの芸の本質です。
なお、この初演に立ち会ったワーグナーの娘たちはセカセカとしたトスカニーニの演奏を評価していたと言うことで、それを持って、この作品の正しいテンポはトスカニーニのものだという主張があるそうです。音楽を心ではなく理屈で聴く人はまだまだ多いようです
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