クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

リスト:交響詩「プレリュード」

エーリッヒ・クライバー指揮 チェコ・フィル 1936年録音




人生は死への前奏曲

交響詩という形式はリストの手になるものと言われています。それだけに「フン族の戦争」などというけったいな題名のついた作品をはじめとして実にたくさん作曲しています。しかし、その殆どはめったに演奏されることはないようで、録音もあまりお目にかかりません。そんな中で、唯一ポピュラリティを獲得しているのがこの「プレリュード(前奏曲)」です。
 これはフランスの詩人ラマルティーヌの「詩的瞑想録」に題を得たものだと言われています。ものの本によると(^^;、リストはスコアの扉にこのように記しているそうです。
 「人生は死への前奏曲でなくて何であろうか。愛は全ての存在にとって魅惑的な朝である。しかし運命は冷酷な嵐によって青春の幸福を必ず破壊してしまう。傷つけられた魂は孤独な田園生活にその慰めを見いだすが、人はその静けさの中に長くいることに耐えられない。トランペットの警告がなりわたるとき、すべての人は自分自身の意義を求めて再び闘いの中心に飛び込んでゆく」

 こう言うのを読むと、何か人生で辛いことがあったのかな、などと思ってしまいますが、調べてみるとこれが作曲されたときは、2番目の愛人となったヴィトゲンシュタイン侯爵夫人との同棲生活に入って、もっとも幸せの絶頂にいたころなんですね。でも、考えてみるとこれは当然のことで、不幸のどん底にいる人が「人生は死への前奏曲である・・・・」なんて言って曲作りをするなんて不可能です。
 自分がそういう不幸とは一番遠いところにいるからこそ、逆にこのようなテーマで曲作りが出きるのだと言えます。そして同時に、こういう大仰な物言いの中から、いわゆる「ロマン派的な価値観」が垣間見られるような気がします。

エーリッヒ・クライバーのプレリュード


今では「カルロス・クライバーのお父さん」と言う方が通りがよくなってしまったエーリッヒです。カルロスがデビューした頃は、「あのエーリッヒの息子」として紹介されたことを思えば隔世の感です。
 しかしこの逆転は、エーリッヒにとって決して残念なものではなかったはずです。偉大な父を持つと、息子は殆どつぶれてしまうのが普通ですが、この親子はそんな中にあって数少ない「幸福な例外」となったのですから。

 ここで聞けるエーリッヒの演奏は、1954年にフルトヴェングラーが残した演奏を聞いたものにとってはやはり物足りなさを感じます。しかし、それはエーリッヒの演奏が不十分だというのではなくて、フルトヴェングラーがすごすぎるのです。
 同じように、息子との立場の逆転も、エーリッヒが「それほどの存在」ではなかったからではなくて、クライバーがすごくなりすぎたからです。
 エーリッヒからは、力も才能もありながら、決してナンバーワンにはなれなかったものの悲哀みたいなものを感じるのはユング君だけでしょうか。

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