ラヴェル:スペイン狂詩曲
ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1956年1月23日録音
Ravel:スペイン狂詩曲 「夜への前奏曲(Pre'lude a la nuit)」
Ravel:スペイン狂詩曲 「マラゲーニャ(Malaguen~a)」
Ravel:スペイン狂詩曲 「ハバネラ(Habanera)」
Ravel:スペイン狂詩曲 「祭り(Feria)」
ラヴェルが初めて出版した本格的な管弦楽作品
もとはピアノの連弾用として作曲されたのですが、その後オーケストレーションをほどこし、さらには4曲をまとめて「組曲」として出版されました。そして、管弦楽法の大家と言われるラヴェルの記念すべき管弦楽作品の第1号がこの作品です。
ラヴェルの母親はスペインはバスク地方の出身であり、ラヴェル自身もそのバスクの血を引き継いでいることを誇りにしていました。その意味でも、彼がオーケストラ作品の第1号にスペインを素材に選んだことは十分に納得がいきます。そして、この後も「スペインの時」や「ボレロ」のように、スペイン素材を使った作品をたくさん作曲しています。
それにしても、この作品は間違いなくリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」の華麗なオーケストレーションをまっすぐに受け継いでいます。オーケストラ作品の第1号にして、すでに後年「オーケストレーションの天才」「管弦楽の魔術師」と呼ばれる片鱗・・・『複雑多様ではあるけれども繁雑難解ではない』という彼のモットーが実現されていることには驚かされます。
第1曲:Pre'lude a` la nuit(夜への前奏曲)
第2曲:Malaguena(マラゲーニャ)
第3曲:Habanera(ハバネラ)
第4曲:Feria(祭り)
これぞミュンシュの真骨頂
ミュンシュという人の最大の特徴は、複雑を極めるスコアの各パートを実にバランス良く鳴らし分けることです。それは、彼の初来日の時に、あの吉田大明神に「まるで目の前にスコアを見ているような明晰さ」と言わしめた事にも良くあらわれています。ただし、大明神はそれに続けて、「しかし、その演奏に私は感心しなかった」とも書いています。
今回、ボストン時代の録音をまとめて聞いてみて、この大明神の御宣託が痛いほどに理解できます。
この国におけるクラシック音楽を支えてきた中核とも言える人々は、音楽に対して造形の確かさや響きの美しさ、明晰さだけでなく、それに加えて「人生」を担いうるだけの「ドラマ性」をプラスαとして求めてきました。
誤解を恐れずに簡潔に言い切ってしまえば、ミュンシュの作り出す音楽は前者に関してはほぼ満点、ところが後者に関しては「あんた、何が言いたいの?」と思ってしまうのです。
ですから、晩年のパリ管時代の、人が変わったような情念ぶちまけのブラ1や幻想は評価が高かったのです。でも、あの演奏には、彼本来の持ち味だったオケをバランス良く響かせる「技」は姿を消しています。
もちろん、音楽に何を求めようとそれは各個人の自由に属する問題です。
おそらく、ボストン時代のミュンシュにとって、そんな「ドラマ性」など知った話ではなかったのでしょう。
しかし、東海の小島に住まう数少ないクラシック音楽ファンがそれを良しとしなかったとしても、それもまた責められるはずはありません。それが、ベートーベンやブラームスのような独墺系の音楽ならば尚更です。
しかし、それがラヴェルのような音楽だとどうでしょう。
以前に書いた「ミュンシュの作るオケの響きは「軽み(かろみ)」があります。低弦がゴリゴリすることは絶対になくていつも軽さを失いません。そして、そう言う響きが実に気持ちよく横へとつながっていきます。」というミュンシュの美質が全てプラス面に働いています。
そして、ラヴェルの凄腕は、スコアを精緻に表現していけば、自ずとそこにドラマが浮かび上がるように仕上げています。いや、逆に言えば、精緻に再現する「技」がなければ、ラヴェルのドラマは浮かび上がってきません。
ミュンシュはドイツとフランスのDNAを持つと言われますが、こういう演奏を聴くと、彼のDNAはやはりフランスのようです。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2026-06-21]

アイルランド民謡「ミンストレル・ボーイ」(Rose Plays the Minstrel Boy & Others)
(T)クリストファー・リンチ:(Cello)レナード・ローズ (Flute)ジョン・ワマー (Harp)ローラ・ニューウェル 1947年録音(Christopher Lynch:(Cello)Leonard Rose (Flute)John Wummer (Harp)Laura Newell Recorded on 1947)
[2026-06-19]

ハイドン:弦楽四重奏曲第66番 ト長調, Op.64, No.4, Hob.3:66(Haydn:String Quartet in G major, Op.64, No.4, Hob.3:66)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1937年11月16日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on November 16, 1937)
[2026-06-17]

ベートーベン:リギーニのアリエッタ「恋人よ来たれ」による24の変奏曲 WoO 65(Beethoven:24 Variations on Righini's Arietta Venni amore, WoO 65)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)
[2026-06-15]

ボッケリーニ:チェロ・ソナタ第1番 イ長調, G.13(Boccherini:Cello Sonata No. 1 in A Major, G. 13)
(Cell)エンリコ・マイナルディ:(P)カルロ・ゼッキ 1952年録音(Enrico Mainardi:(P)Carlo Zecchi Recorded on 1952)
[2026-06-13]

ベートーベン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 「大公」 Op.97(Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major "Archduke")
(Vn)ダヴィド・オイストラフ (P)レフ・オボーリン (Cello)スヴィヤトスラフ・クヌシェヴィツキー 1958年5月9日~10日&12日録音((Vn)David Oistrakh:(P)Lev Oborin (Cello)Sviatoslav Knushevitsky Recorded on May 9-10&12, 1958)
[2026-06-11]

フランツ・シュミット:ピアノ五重奏曲(Schmidt:Piano Quintet in G major)
バリリ四重奏団:(P)イエルク・デムス 1952年録音(Barylli Quartet:(P)Jorg Demus Recorded on 1952)
[2026-06-09]

バッハ:教会カンタータ 「死人の中より甦りしイエス・キリストを覚えよ」 BWV67(J.S.Bach:Halt im Gedachtnis Jesum Christ, BWV 67)
ギュンター・ラミン指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 トーマス教会少年合唱団 他 1954年2月26日録音(Gunther Ramin:Gewandhausorchester Leipzig Thomanerchor Leipzig (Org)Hannes Kastner (A)Gertrud Wagner (T)Gert Lutze (Bass)BJohannes Oettel Recorded on February 26, 1954)
[2026-06-07]

エルガー:セレナーデ Op.20(Elgar:Serenade for String Orchestra in E minor, Op.20)
マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1959年6月6日録音(Sir Malcolm Sargent:The Philharmonia Orchestra Recorded on June 6, 1959)
[2026-06-05]

ハイドン:弦楽四重奏曲 ハ長調, Hob.III:65(Haydn:String Quartet in C major, Hob.III:651)
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団:1954年録音(Vienna Concert House Quartet:Recorded on 1954)
[2026-06-03]

バッハ:教会カンタータ 「人々シバよりみな来たりて」 BWV65(J.S.Bach:ie werden aus Saba alle kommen, BWV 65)
ギュンター・ラミン指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 トーマス教会少年合唱団 (T)Gert Lutze (Bass)BJohannes Oettel 1952年1月11日録音(Gunther Ramin:Gewandhausorchester Leipzig Thomanerchor Leipzig (T)Gert Lutze (Bass)BJohannes Oettel Recorded on January 11, 1952)