シューベルト:交響曲第7(8)番 未完成
フルトヴェングラー指揮 ウィーンフィル 1950年1月19〜21日録音
Schubert:交響曲第8(7)番「未完成」 第1楽章
Schubert:交響曲第8(7)番「未完成」 第2楽章
わが恋の終わらざるがごとく・・・
この作品は1822年に作曲をされたと言われています。
シューベルトは、自身も会員となっていたシュタインエルマルク音楽協会に前半の2楽章までの楽譜を提出しています。
協会は残りの2楽章を待って演奏会を行う予定だったようですが、ご存知のようにそれは果たされることなく、そのうちに前半の2楽章もいつの間にか忘れ去られる運命をたどりました。
この忘れ去られた2楽章が復活するのは、それから43年後の1865年で、ウィーンの指揮者ヨハン・ヘルベックによって歴史的な初演が行われました。
その当時から、この作品が何故に未完成のままで放置されたのか、様々な説が展開されてきました。
有名なのは映画「未完成交響楽」のキャッチコピー、「わが恋の終わらざるがごとく、この曲もまた終わらざるべし」という、シューベルトの失恋に結びつける説です。
もちろんこれは全くの作り話ですが、こんな話を作り上げてみたくなるほどにロマンティックで謎に満ちた作品です。
前半の2楽章があまりにも素晴らしく、さすがのシューベルトも残りの2楽章を書き得なかった、と言うのが今日の一番有力な説のようです。しかし、シューベルトに匹敵する才能があって、それでこのように主張するなら分かるのですが、凡人がこんなことを勝手に言っていいのだろうか、と、ためらいを覚えてしまいます。
そこで、ユング君ですが、おそらく「興味」を失ったんだろうという、それこそ色気も素っ気もない説が意外と真実に近いのではないかと思っています。
この時期の交響曲は全て習作の域を出るものではありませんでした。
彼にとっての第1番の交響曲は、現在第8番と呼ばれる「ザ・グレイト」であったことは事実です。
その事を考えると、未完成と呼ばれるこの交響曲は、2楽章まで書いては見たものの、自分自身が考える交響曲のスタイルから言ってあまり上手くいったとは言えず、結果、続きを書いていく興味を失ったんだろうという説にはかなり納得がいきます。
ただ、本人が興味を失った作品でも、後世の人間にとってはかけがえのない宝物となるあたりがシューベルトの凄さではあります。
一般的には、本人は自信満々の作品であっても、そのほとんどが歴史の藻屑と消えていく過酷な現実と照らし合わせると、いつの時代も神は不公平なものだと再確認させてくれる事実ではあります。
深い絶望感に満ちた演奏です。
シューベルトの作品にはどこか暗い情念がつきまといます。 ここで紹介しているフルトヴェングラーによる「未完成」は、そう言う暗い情念が横溢した代表的な演奏です。
昨今はこういう大仰な物言いは好まれませんし、さらにシューベルトに対する研究も進んで、このような表現は「誤り」だとするのが定説になってきています。そのために、古楽器による演奏のみならずモダン楽器を使った演奏でも、随分と風通しの言い乾いた表現が主流となっています。
それにも関わらず、リスナーの投票でベスト盤を選定すると、専門家が何と言おうとこのフルトヴェングラーやワルターの演奏が上位を占めてしまいます。
ワルターの演奏が、「わが恋の終わらざるがごとく、この曲もまた終わらざるべし」という愛惜の念が切々と伝わってくる演奏とするなら、フルトヴェングラーの演奏はそれ以上の深い絶望感に覆われた表現となっています。
今だにフルトヴェングラーの自殺説が根強く残っていますが、こういう演奏を聞かされると、少なくとも彼の胸中に渦巻いていたであろう深い絶望感の一端ぐらいは感じ取れます。戦争というものは、いつの時代にあっても多くの人の心に癒しがたい傷を刻みつけます。
よせられたコメント
2010-04-27:いつものクリュイタンス好き
- この演奏のおかげでこの曲がとても好きになりました。
ユングさんありがとうございます!
いつかやってみたいなーこの曲。
2011-04-14:nako
- 情念というか怨念というかが満ち溢れた演奏で、丑三つ時にでも聴くのがよいような気もします。。。なんて悪口を言いながらも聴いちゃうのが、フルトヴェングラーの凄いところでしょう。フルヴェンの後にフルヴェンなし。カルロス・クライバーの演奏の方が好きなんですが、そう言わざるを得ません。
2012-11-03:マオ
- シューベルトの「未完成」は不思議な魅力がありますね。オーケストレーションなどけっして上手に書けているとは思わないのですが、つい聴きたくなります。メロディーや展開方法にシューベルトらしさが出ています。また他の誰の交響曲より平面的な特徴を感じます。長所も短所も含めてです。フルトヴェングラーの演奏はそんな私に少し「渇」を入れてくれました。悲しくも劇的で、強壮で遠慮なく金管を轟かせるところなど圧巻です。それでいて静かなところは感傷的にならず切々と語りかけてきます。私見ですが、フルトヴェングラーはベートーヴェンの交響曲と並んでこの曲に愛着をもっていたのではないでしょうか。自身の音楽性を発揮するにふさわしい演目ととらえていたのでは…。
2014-06-08:Guinness
- かつて良く聴いていたフルトヴェングラーの演奏を久しぶり聴かせていただきましたが、やはりフルトヴェングラーというのは楽譜の読みが深いなーっと思わされました。
そういえばほかの曲を含め随分とフルトヴェングラーの演奏を聴いてないのに気づきます。この機会にまとめて聴いてみようかと思います。
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