ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1958)
Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [1.Allegro Vivace E Con Brio]
Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [2.Allegretto Scherzando]
Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [3.Tempo Di Menuetto]
Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [4.Allegro Vivace]
谷間に咲く花、なんて言わないでください。

初期の1番・2番をのぞけば、もっとも影が薄いのがこの8番の交響曲です。どうも大曲にはさまれると分が悪いようで、4番の交響曲にもにたようなことがいえます。
しかし、4番の方は、カルロス・クライバーによるすばらしい演奏によって、その真価が多くの人に知られるようになりました。それだけが原因とは思いませんが、最近ではけっこうな人気曲になっています。
たしかに、第一楽章の瞑想的な序奏部分から、第1主題が一気にはじけ出すところなど、もっと早くから人気が出ても不思議でない華やかな要素をもっています。
それに比べると、8番は地味なだけにますます影の薄さが目立ちます。
おまけに、交響曲の世界で8番という数字は、大曲、人気曲が多い数字です。
マーラーの8番は「千人の交響曲」というとんでもない大編成の曲です。
ブルックナーの8番についてはなんの説明もいりません。
シューベルトやドヴォルザークの8番は、ともに大変な人気曲です。
8番という数字は野球にたとえれば、3番、4番バッターに匹敵するようなスター選手が並んでいます。そんな中で、ベートーベンの8番はその番号通りの8番バッターです。これで守備位置がライトだったら最低です。
しかし、私の見るところ、彼は「8番、ライト」ではなく、守備の要であるショートかセカンドを守っているようです。
確かに、野球チーム「ベートーベン」を代表するスター選手ではありませんが、玄人をうならせる渋いプレーを確実にこなす「いぶし銀」の選手であることは間違いありません。
急に話がシビアになりますが、この作品の真価は、リズム動機による交響曲の構築という命題に対する、もう一つの解答だと言う点にあります。
もちろん、第1の解答は7番の交響曲ですが、この8番もそれに劣らぬすばらしい解答となっています。ただし、7番がこの上もなく華やかな解答だったのに対して、8番は分かる人にしか分からないと言う玄人好みの作品になっているところに、両者の違いがあります。
そして、「スター指揮者」と呼ばれるような人よりは、いわゆる「玄人好みの指揮者」の方が、この曲ですばらしい演奏を聞かせてくれると言うのも興味深い事実です。
この上もなく貴重な田舎オケの風合い
何故かこの8番だけがモノラル録音だったようです。不思議ですね!!
カイルベルトのブラームスの紹介が終わったので、次はベートーベンということになります。
カイルベルトはテレフンケンで1番から8番まで録音が残っています。残念ながら9番だけは彼の早すぎた死に追いつけなかったみたいです。オケは彼に最もなじみのあるバンベルク交響楽団・ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団・ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団の3つのオケです。
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- ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音
- ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1956年録音
- ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1959年録音
- ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音
- ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音
- ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1959年録音
- ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音
さて、ここで我ながら不思議に思ったのは、ブラームスに関しては完全に視野外だったのに対して、ベートーベンに関しては3番「エロイカ」だけがアップされていて、その後長く放置されてしまっているのです。ふつうはエロイカをアップすれば残りの交響曲もアップしてるだろうと思うのですが、・・・これはどうしたことだ?・・・と「エロイカ」のページを確認すると次のようにほざいていました。
前回アップしたブルックナーでは、作品そのものが煉瓦を積み重ねたような構造をしているので演奏そのものもゴツゴツしたものになったのですが、エロイカだとそこまで無骨にはなりません。でも、この「物わかりの良さ」がいささかもの足りず、出来れば、あのブル9のようなごっついエロイカを聞かせてほしかったなとも思います。
ただし、そのあたりがカイルベルトという人の限界だったのかもしれません。
持って回った言い方をしていますが、そのころの私にはこの「エロイカ」はいまひとつ気に入らなかったのでしょう。そう思って、試しに5番「運命」を聞いてみると、なるほど、そういうことかと「ほざいた理由」がなんとなくわかりました。
一言でいえば、カイルベルトの演奏にしては「エロイカ」も「運命」もはいささか「なで肩」だと思ったようなのです。
それゆえに、なんだかカイルベルトのベートーベンって今一つかなと思ってしまったようです。
そして、それ以後の交響曲を紹介するのが後回しになり、その後回しがいつの間にか放置という結果になっていたのでしょう。
そして、今回もう一度聞き返してみたのですが「エロイカ」や「運命」に関しては、その感想は基本的にはあまり変わりませんでした。しかし、まあこういうのもありかなとは思いました。
しかし、それ以外の交響曲に関してはそこまでの不満は感じませんでした。
カイルベルトといえば「武骨」という言葉が常に付きまとうのですが、私は意外と旋律ラインを大切にする人だという思いがあります。そして、その思いが「エロイカ」と「運命」では前に出すぎているような気がするのです。
しかし、それ以外の交響曲に関しては歌心と構成のバランスがうまく取れていて、勁くて伸びやかな音楽が魅力的です。
そう、まさに「強い」のではなく「勁い」のです。「勁い」とは単なる強度ではなくて、芯がしっかりして張りつめているさまをあらわします。つまりは、全体の構成はしっかりとしていながら、その中に豊かでありながらきりっとした歌心が満ちているのです。
そして何よりも聞くべきは、かつてのドイツのオケが持っていた伝統的な響きです。どっしりとした低声部に支えられた生成りの風合いは今では聞くことのできないものです。
昨今のオケは各声部のバランスを完璧に取った上で均等に鳴らすという神業のようなことを平然とやってのけます。結果として、オケの響きは「自然素材の風合い」ではなくて、「クリスタルな透明感」が支配的となります。もちろん、それがどれほど凄いことなのかはよくわかっているつもりです。それは「極上の響き」といってもいいと思っています。
しかし、7番のように、カラヤン統治下にあって未だドイツの田舎オケの風情を残したベートーベンを聞くと、「やっぱりいいなぁ」とほざいてしまうのです。
バンベルク交響楽団とハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団はベルリンフィルと比べれば不満な部分はあるのですが、それでも昔懐かしい田舎オケの風合いは今となってはこの上もなく貴重なものです。
まあ、とにかく1番から順にカイルベルトのベートーベンを聞いてもらいましょう。
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