グルック:シンフォニア ト長調(Gluck:Sinfonia in G major)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 1958年6月11日録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Recorded on june 11, 1958)
Gluck:Sinfonia in G major [1.Allegro]
Gluck:Sinfonia in G major [2.Andante]
Gluck:Sinfonia in G major [3.Allegro]
交響曲の産声

グルックと言えば「オペラの人」で、シンフォニアなんて書いていたのかなと思ってしまうのは、グノーの交響曲と同じでしょうか。しかし、考えてみれば、彼はミラノで数年にわたってサンマルティーニに学んでいるのです。
と言っても、それがどうしたと思われる方が少なくないと思うのですが、サンマルティーニはオペラから派生した演奏会用の楽曲としての「シンフォニア」というジャンルを切り開いた人物なのです。そして、この「シンフォニア」というスタイルに最も強く影響を受けたのはハイドンで、彼はこの可愛らしい演奏会用の器楽曲を「交響曲(シンフォニー)」へと仕上げていくのです。
つまりは、シンフォニアとは「交響曲の産声」とも言うべきスタイルと言えるのです。
グルックはハイドンと較べれば一世代前になるのですが、師であるサンマルティーニと同様にオペラを中心に活躍しながらも、時には演奏会用のシンフォニアも幾つか残したようなのです。
ただし、今に至るも彼の器楽曲はあまり研究が為されていないようで、オペラに関しては43作のオペラを残している事は分かっているのですが、彼がどれほどのシンフォニアを作曲したのかはよく分からないようです。
一応目安とされるのは、ベルギーの音楽学者であったアルフレッド・ヴォトケンヌが整理したもので、ヴォトケンヌ番号なるものがつけられているようです。ただし、その番号はかなり不十分なもののようで未だ議論は尽きないようです。
ちなみに、ミヒ・ガイックが録音した「グルック:シンフォニア集」には以下の作品んが収録されているようです。
- 交響曲 ト長調「ヴァイマール」 Wq. deest, Chen G3
- 協奏交響曲 ニ長調 Wq. deest, Chen D6
- 交響曲 イ長調「レーゲンスブルク」 Wq. deest, Chen A1
- 交響曲 ヘ長調 Wq. 165.5, Chen F1
- 交響曲 ニ長調 Wq. 165.2, Chen D2
この中には、ヴォトケンヌが整理したシンフォニアには含まれていない作品もあるようです。
信頼していい指揮者
鳥類には「刷り込み」という習性があることはよく知られています。卵から孵化したときにはじめて見た相手を親だと思ってしまう習性です。
ただし、これとよく似たことが人間にもあってこの「刷り込み」という言葉はよく使われます。
そう言う人間の「刷り込み」の一つの典型がクラシック音楽の世界にもあります。
それは、初めて接した作品を聞いたときに、その演奏をもってその作品のスタンダードだと認識してしまうことです。
ただし、熱心にあれこれの演奏や録音を聞いているうちにその「刷り込み」がどうやらおかしいと言うことに気づいて、そのスタンダードの変更を迫られることも良くあることです。もう少し正確に言えば、ストライクゾーンがより広くなると言っていいかもしれません。
ただし、当初のスタンダードがかなり特異だった場合には、そこに至るまでは随分と時と手間がかかります。
ですから、私も良く「面白い演奏ではあるけれども、一番最初には聞いてはいけない演奏」などと言う表現をよく使ってきました。
しかし、ここでマルケヴィッチが取り上げているグノーの交響曲第やグルックのシンフォニアみたいな作品になると、ほとんどの人はこれがファースト・コンタクトと言うことになるでしょう。私もそうでした、
そして、その時に刷り込まれた印象を覆すほどの出会いはほとんどないでしょう。
ですから、グノーやグルックのこれらの作品はこの演奏がスタンダードとして定着することになるのでしょう。
しかしながら、そのあたりの危惧は、指揮者がマルケヴィッチであればそれほどの懸念はないはずです。
そう言えば、以前にベルワルドの交響曲を幾つか紹介したのですが、その時に以下のように書いていました。ベルワルドもまたかなりマイナーな存在です。
このベルワルドに関して言えば、マルケヴィッチの録音はまさにスタンダードと言っていいほどに信頼できる演奏であり、その音楽を力強く歌わせるスタイルはベルワルドの持つ魅力を存分に味合わせてくれます。
マルケヴィッチはしっとりとした歌の部分であってもそう言う甘さに寄りかかることはありませんし、音楽が大きく盛り上がっていく場面でもその盛りあげ方は実に自然であざとさというものが全くありません。そして、作品全体への目配りも万全で、聞き終われば「そうだったのか」という不思議な納得感を聞き手に与えてくれます。
まあ、そのあたりはベースが「作曲家」であることが大きく寄与しているのでしょう。
おそらく、これと同じ事がこの極めてマイナーな作品にもあてはまることでしょう。
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