クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

モーツァルト:交響曲第29番 イ長調, K.201 (186a)

エデゥアルト・ファン・ベイヌム指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1956年5月録音





Mozart:Symphony No.29 in A major, K.201/186a [1.Allegro moderato]

Mozart:Symphony No.29 in A major, K.201/186a [2.Andante]

Mozart:Symphony No.29 in A major, K.201/186a [3.Menuetto: Allegretto; Trio]

Mozart:Symphony No.29 in A major, K.201/186a [4.Allegro con spirito]


シリアスな人間的感情を表現する音楽へと変貌

ザルツブルグ時代のモーツァルトの交響曲の中では、このK.201のイ長調のシンフォニーとK.183のト短調シンフォニーは特別な意味を持っています。それはアインシュタインが、「イタリア風シンフォニーから、なんと無限に遠く隔たってしまったことか!」と絶賛したように、音楽会の始まりを告げる序曲でしかなかったシンフォニーという形式がこの上もなくシリアスな人間的感情を表現する音楽へと変貌したことを表明しているのです。

そして、そのシリアスな表情はこの両端楽章に於いても、ト短調シンフォニーの両端楽想に於いてもはっきりと刻み込まれています。
さらにいえば、ハイドンと較べればやや物足りないと言われるモーツァルトの最終楽章は、このこのシンフォニーの最終楽章においては入念に作り込まれたソナタ形式になっています。

そして、そのシリアスな表現は中間の2楽章に力を及ぼしていて、付点音符を多用したアンダンテ楽章はこの上もなく雄弁に語り続けることで舞踏的な是界から抜け出そうとしてます。
それは続くメヌエット楽章にもおよび、それは既に舞踏の音楽と言うよりは一つのシンフォニックな世界に達しようとしています。

ただし、そう言う交響曲の世界が内包すべき「構築」という抽象性はモーツァルトらしい叙情性にくるまれています。それこそが、ハイドンが為し得なかったことであり、ベートーベンが理解できなかった世界なのでしょう。

  1. 第1楽章:アレグロ・モデラート(ソナタ形式)

  2. 第2楽章:アンダンテ(ソナタ形式)

  3. 第3楽章:メヌエット(複合三部形式)

  4. 第4楽章:アレグロ・コン・スピーリト(ソナタ形式)




しなやかで芳醇なモーツァルト


これは実に素晴らしいモーツァルトだと感心させられました。
あまり話題になることのない演奏だと思うのですが、ベイヌム&コンセルトヘボウという黄金の組み合わせに相応しいしなやかで芳醇な響きに包まれたモーツァルトです。
50年代のモーツァルトと言えば、もう少し大振りで低声部も分厚めに鳴らすというスタイルが多かったように思います。もっとも、トスカニーニのようにシャープに鳴らす人もいたのですが、ヨーロッパの方では、今の耳からすればいささか重たげな音楽が一般的でした。

しかし、このベイヌムによるモーツァルトにはそのような重さは感じません。かといって、昨今のピリオド演奏や、それに影響を受けた演奏のようなどこか貧血気味のような響きとも全く無縁です。
重くもなく、貧血気味でもなく、そしてしなやかなリズムは神経質にもならず重くもならず、まさにモーツァルトはこういうふうに聞かせて欲しいという私の願いにピッタリの演奏です。

だからといって、あれこれの演奏スタイルを全て足して割ったようないい加減な中庸さとは無縁です。
おそらく、これこそがベイヌムの中にあったモーツァルト像であり、そのモーツァルトを手兵であるコンセルヘボウの素晴らしい響きをフルに生かして描き出したものです。

1956年と言えばベイヌムにとっては50代半ばの脂ののりきった時期だと思うのですが、現実はこの3年後にはこの世を去るので結果的には最晩年の録音と演奏と言うことになります。そして、その晩年の演奏はどこか剛毅さのようなものが前面に出てくるような気がしているのですが、ここにはそう言うゴツゴツ感は全くありません。
もちろん、対象がモーツァルトなのですから当然と言えば当然なのですが、こう言うのを聞かされるともっとたくさんの、とりわけ後期の交響曲も晩年に録音しておいて欲しかったと思わずにはおれません。

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