モーツァルト:交響曲第29番 イ長調 k201
カラヤン指揮 ベルリンフィル 1959年12月録音
Mozart:Symphony No.29 in A major k201 [1st movement]
Mozart:Symphony No.29 in A major k201 [2nd movement]
Mozart:Symphony No.29 in A major k201 [3rd movement]
Mozart:Symphony No.29 in A major k201 [4th movement]
ザルツブルグ交響曲(後半)
<ザルツブルク(1773?1774年)>
交響曲第22番 ハ長調 K.162
交響曲第23番 ニ長調 K.181
交響曲第24番 変ロ長調 K.182
交響曲第25番 ト短調 K.183
交響曲第27番 ト長調 K.199
交響曲第26番 変ホ長調 K.184
交響曲第28番 ハ長調 K.200
交響曲第29番 イ長調 K.201
交響曲第30番 ニ長調 K.202
アインシュタインは「1773年に大転回がおこる」と述べています。
1773年に書かれた交響曲はナンバーで言えば23番から29番にいたる7曲です。このうち、23・24・27番、さらには26番は明らかにオペラを意識した「序曲」であり、以前のイタリア風の雰囲気を色濃く残したものとなっています。しかし、残りの3曲は、「それらは、---初期の段階において、狭い枠の中のものであるが---、1788年の最後の三大シンフォニーと同等の完成度を示す」とアインシュタインは言い切っています。
K200のハ長調シンフォニーに関しては「緩徐楽章は持続的であってすでにアダージョへの途上にあり、・・・メヌエットはもはや間奏曲や挿入物ではない」と評しています。そして、K183とK201の2つの交響曲については「両シンフォニーの大小の奇跡は、近代になってやっと正しく評価されるようになった。」と述べています。そして、「イタリア風シンフォニーから、なんと無限に遠く隔たってしまったことか!」と絶賛しています。そして、この絶賛に異議を唱える人は誰もいないでしょう。
時におこるモーツァルトの「飛躍」がシンフォニーの領域でもおこったのです。そして、モーツァルトの「天才」とは、9才で交響曲を書いたという「早熟」の中ではなく、この「飛躍」の中にこそ存在するのです。
カラヤン風の仕立てでモーツァルトを召し上がれ
カラヤンは何でも録音した指揮者ですが、同郷の天才であったモーツァルトとはどうにも相性が悪かったようです。
ザルツブルグ近郊にあるカラヤン家の前は「カラヤン通り」と言われるのですが、この通りの看板がよく盗まれるので有名でした。口さがない地元の連中は、自分の作品をあまりにも酷く演奏することに腹を立てたモーツァルトの霊のせいだと噂したそうです。そんな噂が流れるほどにカラヤンとモーツァルトは相性が悪いと言うことです。
カラヤンはたとえてみれば一流のフレンチシェフです。
どんな素材であっても、彼は腕によりをかけた「カラヤン・ソース」をふりかけて一流の料理に仕上げてしまいます。
たとえば、彼が残した晩年のシベリウスなんかは「自家燻製したフィンランドサーモンと帆立貝柱のムースのキャベツ包み蒸し 生雲丹とパセリのヴルーテ」みたいな雰囲気になっています。
それはそれでゴージャスな雰囲気が漂っていて悪くはないですし、何よりも、どんな素材があてがわれても口当たりのいい絶品料理に仕立て上げる腕はたいしたものでした。そして、そう言う腕があればこそ「帝王カラヤン」と呼ばれるまでの地位を獲得したのです。
しかし、時には素材が持っている魅力を素直に味わいたい人もいますから、そう言う人にとっはカラヤン風のソースは鬱陶しく感じることもありました。さらには、何でもかんでも万人好みの味に仕立てあげる彼の料理法に批判的な人も多く生み出すことにもなりました。
そして、問題はモーツァルトです。
このモーツァルトという素材は料理人にあれこれといじくり回されることを強く拒否します。こういう喩えは事柄を単純化してしまうので避けたいのですが(^^;、それでもあえて言えば、モーツァルトという素材は日本料理の料理人のように接するのがベストだと感じています。
日本料理の真髄は素材の良さを見抜き、その良さをできる限り損なわないように料理に仕立て上げる事です。
最高の魚が手に入れば、それを刺身で出したいのが日本料理です。
刺身なんて何の手も加えていないように見えながら、魚のさばき方、包丁の入れ方で味わいは全く別物になります。
しかし、フレンチのシェフならばそれを生のままで食卓に供するなどと言うことは絶対にあり得ないはずです。どちらがいいとか悪いとか言う話ではなく、それはもう文化の違い、本能の違いみたいなものです。
カラヤンのモーツァルトも、できることならマリネくらいで止めておいてほしいのですが、彼の本能としてそれを適度に焼いたり蒸したりして、最後はカラヤンソースをかけなくては我慢ができないのです。
そう言えば、出典は忘れましたが、最晩年に「モーツァルトとシューベルトだけは苦手だ」と語っていました。
自分が演奏するモーツァルトに批判があることは知っていましたし、その批判に妥当性があることも分かっていたはずです。あのカラヤンがそんな簡単なことが分からないはずはないのです。そして、そのことが分かりながら、それでもフレンチシェフとしての己の本性を捨てなかったところにこそカラヤンの偉さがあったんだと、最近になってつくづくと思うようになりました。
ですから、カラヤンのモーツァルトを楽しむときは、せっかくの素材が台無しだ!!などという狭い了簡は捨てましょう。
そして、心穏やかに、カラヤン風に仕立て上げられたモーツァルトを楽しみましょう。
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