クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ビゼー:交響曲 ハ長調

トーマス・ビーチャム指揮:フランス国立放送管弦楽団 1959年10月&11月録音





Bizet:交響曲 ハ長調 「第1楽章」

Bizet:交響曲 ハ長調 「第2楽章」

Bizet:交響曲 ハ長調 「第3楽章」

Bizet:交響曲 ハ長調 「第4楽章」


これこそ、青春の歌です。

音楽家の悪妻といえば、モーツァルトの妻、コンスタンツェが有名ですが、極めつけはビゼーでしょう。
彼女は夫の才能を全く信用せずに馬鹿にし続けていました。さらに、ビゼーがその不幸な人生を若くして終えると、彼女はさっさと別の男と再婚をして、前夫の作品はほったらかしにして散逸するのに任せました。

 おかげで、彼の作品はそのかなりの部分が失われてしまいました。このビゼー17才の手になる若書きのすばらしい作品も、今世紀になって再発見されたものです。
 コンスタンツェは少なくとも夫の作品を大切に保管しました。
 おかげで私たちは彼の作品のほとんどすべてを失なわずにすみました。

 ビゼーの妻の悪妻ぶりは際だっています。

 それにしても、この作品が17才の若者の作品とはにわかに信じがたいものがありますが、反面、17才の若者にしか書けないだろう、さわやかさと厳かさもあります。
 若者と厳かさというのはなんだか矛盾するみたいですが、それはあまりにも人間というものを知らなさすぎます。
 若者、特に少女というものは、その限られたある一瞬の間だけですが、この上もない神秘性と厳粛さを漂わせます。疑問に思う方は映画「レオン」を見られたし。(もっとも最近はそんな一瞬を持つこともなく、くたびれた大人の女になってしまう人も多いようですが)

 そして、男は少女ほどではないにしても、事情は同じです。
 そういう若さが持つ一瞬の厳かさを、この音楽ははっきりと感じ取らせてくれます。

 ビゼーといえば「カルメン」であることは事実ですが、彼は決してカルメンだけの作曲家ではないのです。

若さと潤いを感じさせてくれる演奏


私にとってのビゼーの交響曲の刷り込みは小沢による録音です。

小沢指揮 フランス国立管弦楽団 1982年4月録音

第2楽章のアダージョが本当に美しく、かつ瑞々しくて、当時の若き小澤征爾の面目躍如たる演奏だと思っていました。ですから、今回、ビーチャムの録音を聞いた後に、個人的には「原点」とも言う小沢の録音を聞き直してみました。

結果は、「聞かなければよかった・・・トホホ^^;)」に尽きます。
まずは録音に問題有りです。ただし、それは小沢に責任のある話ではありません。いわゆるアナログからデジタルへと録音が切り替わるときの「ありとあらゆる問題点」が詰め込まれた録音であり、クオリティ的には明らかに59年録音のビーチャム盤に劣ります。
このデジタル移行期の録音の問題点については「歴史的録音の今日的意義(1)?歴史的録音の音質」という駄文で少しばかり触れていますので、興味のある方は一度読んでみてください。

そして、同じ事を何度も繰り返しますが「Voyage MPD」と言うシステムは、そう言う問題のある録音に関しては無慈悲なまでにそのつまらなさをさらけ出さしてくれます。響きが浅くてキンキンとした固めの音色で潤いというものが全く欠落しています。
また、小沢の演奏も、ビーチャム盤を聞いた後ではあまりにもお行儀がよくて、いささか窮屈な感が否定できません。優等生的な演奏であることは事実ですが、つまらぬ録音にも足を引っ張られて、結果としては心からくつろいで聞けるような音楽にはなっていません。

それに対して、ビーチャム盤の録音の何という素晴らしさ!!
ホルンもオーボエもその響きはこの上もなく生々しく、弦楽器の響きも実に美しくとらえられています。そして、ビーチャムが作り出すゆったりとした世界は聞くものの心をその芯からゆったりさせてくれます。

こんな事を書くと小沢のファンからは石を投げられそうですが、ビーチャムは心で呼吸しているのに対して小沢は頭で呼吸しています。ビーチャムは音楽を心で感じているのに対して、小沢は頭で音楽を計算し構築しようとしています。
小沢と比べてみれば、ビーチャムが実にゆったりと呼吸しながら音楽を作り出していることが手に取るように分かります。

ビーチャムはこの翌年には指揮者を引退し、61年にはこの世を去るのですが、そのような老人の手になる音楽とは信じがたいほどの若さと潤いを感じさせてくれる演奏です。

よせられたコメント

2011-03-20:KIF1208


2012-09-18:鴎外凝視


2012-12-01:マオ


2020-01-03:RYOUITI FUKUDA


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-12-13]

R.コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 作品35(Rimsky-Korsakov:Scheherazade, Op.35)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 ボーンマス交響楽団 (Vn)ジェラルド・ジャーヴィス 1966年12月30-31日(録音(Constantin Silvestri:Bournemouth Symphony Orchestra (Vn)Gerald Jarvis Recorded on Dcember 30-31, 1966)

[2025-12-11]

ベートーヴェン:六重奏曲 変ホ長調, Op.71(Beethoven:Sextet in E-Flat Major, Op.71)
ウィーン・フィルハーモニー木管グループ:1950年録音(Vienna Philharmonic Wind Group:Recorded on 1950)

[2025-12-09]

ベートーベン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」作品125(歌唱:ルーマニア語)(Beethoven:Symphony No.9 in D minor, Op.125 "Choral")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 (S)Emilia (Ms)マルタ・ケスラー、(T)イオン・ピソ (Bass)マリウス・リンツラー (Chorus Master)ヴァシリ・パンテ ジョルジュ・エネスコ・フィル合唱団 (Chorus Master)カロル・リトヴィン ルーマニア放送合唱団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra (S)Emilia Petrescu (Ms)Martha Kessler (T)Ion Piso (Bass)マMarius Rintzler (Chorus Master)Vasile Pintea Corul Filarmonicii "George Enescu”(Chorus Master) arol Litvin Corul Radioteleviziunii Romane Recorded on July, 1961)

[2025-12-07]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調 Op.57(Beethoven: Piano Sonata No.23 In F Minor, Op.57 "Appassionata")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)

[2025-12-06]

ラヴェル:夜のガスパール(Ravel:Gaspard de la nuit)
(P)ジーナ・バッカウアー:(語り)サー・ジョン・ギールグッド 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Read)Sir John Gielgud Recorded on June, 1964)

[2025-12-04]

フォーレ:夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(Faure:Nocturne No.7 in C-sharp minor, Op.74)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-12-02]

ハイドン:弦楽四重奏曲第32番 ハ長調, Op.20, No.2, Hob.3:32(Haydn:String Quartet No.32 in C major, Op.20, No.2, Hob.3:32)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)

[2025-11-30]

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ロ短調 作品58(Tchaikovsky:Manfred Symphony in B minor, Op.58)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フランス国立放送管弦楽団 1957年11月13日~16日&21日録音(Constantin Silvestri:French National Radio Orchestra Recorded on November 13-16&21, 1959)

[2025-11-28]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major ,Op.93)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)

[2025-11-26]

ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)
(P)ジーナ・バッカウアー:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on June, 1964)

?>