マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナより間奏曲
カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年7月21〜24日録音
Mascagni:カヴァレリア・ルスティカーナより間奏曲
女達の顔は皆忘れても
切なくも美しく、そして情熱的な旋律が何度も繰り返されながら、次第に盛り上がり、そして最後は再び静かに消え去っていく「間奏曲」は、このオペラの中ではどのアリアよりも有名かもしれません。
昔、浅田次郎と猫の交流を描いた長編CM(マルハペットフードの「民子」のCM)で実に効果的に使われていました。「泣かせの次郎」の面目躍如たるCMで、「女達の顔は皆忘れても、民子ひとりが忘れられない」に涙した人も多かったのではないでしょうか
若きカラヤンの姿が明瞭に刻印された録音
カラヤンはこのような小品をまとめたものをこの後も何度か録音していますが、その一番最初のトライがこのフィルハーモニア管弦楽団とのコンビでの仕事です。この後は彼の手兵とも言うべきベルリンフィルを使っているのですが、明らかにこの両者では音楽の方向性が異なります。
ベルリンフィルとの録音では何よりも弦楽器セクションを中心としたそのゴージャスな響きに魅了されます。そして、そう言うこれ見よがしの響きで音楽を構成していくやり方に、ユング君も含めて少なくない人々が反発を覚えたわけでもあります。
しかし、このフィルハーモニアとの録音ではその様な感覚的な楽しさは稀薄です。
イギリスのオケというのは一般的にニュートラルな性格を持っていて、時々の指揮者にあわせるという性格が強いのが特徴です。ウォルター・レッグによって設立されたばかりのフィルハーモニアはセッションを組んで録音をするということが本務でしたから、とりわけそうのような性格が強かったように見えます。彼らは、ゴージャスな響きで聞き手を魅了するというような「劇場的なるものへの誘惑」を裁ち切り、何よりも指揮者の指示に出来る限り正確に反応していく事を大切にしていたように見えます。
ですから、このカラヤンとフィルハーモニアの録音では、後年ようなゴージャスさではなくて見通しの良いシャープな音楽な仕上がっています。そして、それは同時に、この後世界のトップへと上り詰めていく若きカラヤンの姿がこの上もなく明瞭に刻印された録音だとも言えます。
さらに、このあまりにも有名な間奏曲の録音に際して、中間部から登場するオルガンのパートを伝説のホルン奏者デニス・ブレインが担当していることでも有名です。もちろん、それはブレインの余技としておもしろ半分で参加したのではなく、オルガンの専門教育を受けた本職のオルガン奏者として参加したものです。この作品をオルガン抜きで演奏するときはホルンなどに割り振るのが一般的ですから、その意味では実に興味深い録音だとも言えます。
よせられたコメント 2009-02-11:福田芳春 心の安らぎを憶えます、暗澹たる気持ちを再びよみがえらせてくれますね。
不死鳥の旅立ちのようです。 2010-10-06:せいの わたしはユングさんのいうところのカラヤンの「ゴージャスな弦」にあまり好感を持っていないのですが、ここでは虚飾を排して、音楽そのものが聞こえてきますね。わたしはこういう演奏のほうが幸福感に浸れます。ベルリンフィルとのこの曲の演奏と聞き比べてみましたが、わたしはこちらのほうが圧倒的に好きです。
しかし、もしかしたらクラシック音楽初心者の方はあのゴージャスさを美しいと思い、音楽のすばらしさと思うのかもしれないなと思ったりします。あのスタイルだったからこそ、カラヤンはクラシック音楽ファン以外に広く認知され、クラシック音楽の普及に寄与したのかもしれませんね。どうでしょう? 2011-08-14:ギネス 私も最近フィルハーモニア管との録音を意として聴いております。反省もしています。
「意外?」とまで言ったらカラヤンが可哀そうかもしれませんが、この両者の組み合わせが生み出した音楽は実に素晴らしい物が多いですね。
スタイルは後年のベルリンフィルとの原型かもしれませんが、こちらの方が演奏に心が入っている感じが致します。ベートーヴェンの全集なんかもそうでした。
「アッ良いな!!」という瞬間が多いですね。
またこの頃までのカラヤンの顔も私は好きです。
【最近の更新(10件)】
[2024-05-27]
ショーソン:協奏曲 Op.21(Chausson:Concert for Violin, Piano and String Quartet, Op.21)
(Vn)ジャック・ティボー (P)アルフレッド・コルトー 弦楽四重奏団[(Vn)イスナール・ヴルフマン,ヴラディーミル・ヴルフマン (Va)ジョルジュ・ブランパン (Cello)モーリス・アイゼンバーグ] 1931年7月2日録音(Jacques Thibaud:(P)Alfred Cortot (vn)Isnard Voufman,Vladimir Voulfman (va)Georges Blanpain (vc)Maurice Eisenberg Recorded on July 2, 1931)
[2024-05-25]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 K.159(Mozart:String Quartet No.6 in B-flat major, K.159)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-05-23]
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488(Mozart:Piano Concerto No. 23 in A major, K.488)
(P)マルグリット・ロン:フィリップ・ゴーベール指揮 パリ交響楽団 1935年12月13日録音(Marguerite Long:(Con)Philippe Gaubert The Paris Symphony Orchestra Recorded on December 13, 1935)
[2024-05-21]
ボッケリーニ:チェロ協奏曲第9番 G.482(Boccherini:Cello Concerto No.9 in B flat major, G.482)
(Cell)ガスパール・カサド:ルドルフ・モラルト指揮 ウィーン・プロ・ムジカ管弦楽団 1958年発行(Gaspar Cassado:(Con)Rudolf Moralt Vienna Pro Musica Orchestra Released in 1958)
[2024-05-19]
ブラームス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番ト長調 Op.78(Brahms:Violin Sonata No.1 in G major, Op.78)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1951年1月4日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on January 4, 1951)
[2024-05-17]
リスト:ペトラルカのソネット104番(Liszt:Deuxieme annee:Italie, S.161 Sonetto 104 del Petrarca)
(P)チャールズ・ローゼン 1963年12月録音(Charles Rosen:Recorded on December, 1963)
[2024-05-15]
サン=サーンス:ハバネラ Op.83(Saint-Saens:Havanaise, for violin & piano (or orchestra) in E major, Op. 83)
(Vn)ジャック・ティボー (P)タッソ・ヤノプーロ 1933年7月1日録音(Jacques Thibaud:(P)Tasso Janopoulo Recorded on July 1, 1933)
[2024-05-13]
ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲, Op.437(Johann Strauss:Emperor Waltz, Op.437)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1962年録音(Jascha Horenstein:Vienna State Opera Orchestra Recorded on December, 1962)
[2024-05-11]
バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番 Sz.119(Bartok:Piano Concerto No.3 in E major, Sz.119)
(P)ジェルジ・シャーンドル:ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1947年4月19日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Eugene Ormandy The Philadelphia Orchestra Recorded on April 19, 1947)
[2024-05-08]
ハイドン:弦楽四重奏曲第6番 ハ長調 ,Op. 1, No. 6, Hob.III:6(Haydn:String Quartet No.6 in C Major, Op. 1, No.6, Hob.3:6)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)