ルネ・レイボヴィッツ指揮とロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団によって録音された「展覧会の絵」と「禿山の一夜」は、一枚のアルバムにまとめられて「The Power Of The Orchestra」というタイトルが付けられてRCAからリリースされました。
曲目が「展覧会の絵」と「禿山の一夜」で、タイトルが「The Power Of The Orchestra」なのですから、さぞやとんでもない「ブッチャキサウンド」が聞けるのかと思いきや、これがそれとは全く真逆、驚くほどに精緻で知的なムソルグスキーが展開されるのです。
考えてみれば指揮者がレイボヴィッツなのですから、そんな馬鹿げた音楽になるはずはないのです。にもかかわらずアルバムのタイトルを「The Power Of The Orchestra」としたレコード制作側のセンスは誉められたものではないでしょう。
ただし、そう言うタイトルをこ付けた理由は、納得は出来ないものの、幾つかの理由は思い当たります。
ですから、この録音はRCAからリリースされたのですが実際に録音に携わったのはDeccaの録音陣であり、エンジニアはケネス・ウィルキンソン(Kenneth Wilkinson)だったのです。そして、数多くの優秀録音を残したウィルキンソンにとっても、このレイホヴィッツとの録音はとびきり優秀な一枚だったのです。
そして、そう言う極めつけの優秀録音が生み出す迫力のあるオーケストラの響きゆえに「The Power Of The Orchestra」というタイトルが閃いたのかもしれません。
しかし、そこで展開される音楽は驚くほどに知的なものであって、「The Power Of The Orchestra」と言うタイトルから誤解されるような勢いだけの音楽とは最も遠い位置にある音楽です。
おそらく、これほどに知的で精緻な「展覧会の絵」はなかなか他で聞けるものでないことだけは確かです。
もう一つの理由は、「禿山の一夜」の方は何ともいえずおどろおどろしい雰囲気になっている事です。そして、その雰囲気が何処か「The Power Of The Orchestra」というタイトルに結びついてしまったのかもしれません。
しかしながら、よく聞いてみれば、その「禿山の一夜」は怪しげな雰囲気にあふれているにもかかわらず「展覧会の絵」に劣る事がないほどの精緻な演奏なのです。
ショーソン:協奏曲 Op.21(Chausson:Concert for Violin, Piano and String Quartet, Op.21)
(Vn)ジャック・ティボー (P)アルフレッド・コルトー 弦楽四重奏団[(Vn)イスナール・ヴルフマン,ヴラディーミル・ヴルフマン (Va)ジョルジュ・ブランパン (Cello)モーリス・アイゼンバーグ] 1931年7月2日録音(Jacques Thibaud:(P)Alfred Cortot (vn)Isnard Voufman,Vladimir Voulfman (va)Georges Blanpain (vc)Maurice Eisenberg Recorded on July 2, 1931)