クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

シューベルト:ピアノ三重奏曲 第2番(D.929)

オイストラフ(Vn)クヌシェヴィツキー(Vc)オボーリン(P):1947年録音





Schubert:ピアノ三重奏曲 D.929「第1楽章」

Schubert:ピアノ三重奏曲 D.929「第2楽章」

Schubert:ピアノ三重奏曲 D.929「第3楽章」

Schubert:ピアノ三重奏曲 D.929「第4楽章」


私は楽しい音楽というものを聞いたことがない

シューベルトは晩年に3つのピアノ三重奏曲を残しました。その内の二つ(D.898・D.929)はかなり規模の大きな作品であり、シューベルト自身によって作品番号の99と100が与えられています。他の一つ(D.897)は「ノットゥルノ」と呼ばれる単一楽章からなる作品です。「ノットゥルノ」はシューベルトの自筆譜にも「アダージョ」としか記されていないので、おそらくは独立した作品ではなくて、おそらくはD.898の緩徐楽章として作られながら結局は使われなかなった音楽だろうと推測されています。

これら三曲はシューベルトの晩年を飾る傑作であることは間違いありませんが、弦楽五重奏曲や三つのピアノソナタなどと比べると少し知名度は落ちるかもしれません。しかし、シューベルトが常に口癖のように語っていた「私は楽しい音楽というものを聞いたことがない」という言葉を実感させてくれる音楽です。
叙情的なメロディが綿々と歌いつがれていくうちに、聞き手はいつしかあてどもない孤独な世界に連れ去られていきます。それは、地に足のついた日常の世界とは異なる、寂寞とした浮遊する世界です。
最初は美しく親しみにあふれたメロディがいつの間にか陰りを帯びて絶望感が滲み出してくるのが、このピアノ三重奏曲が表現している世界です。

ピアノ三重奏曲 第1番(D.898)
第1楽章 アレグロ・モデラート 変ロ長調
ピアノの分散和音にのって第2主題がチェロによって歌い出される部分の何という素晴らしさ!!
第2楽章 アンダンテ・ウン・ポコ・モッソ 変ホ長調
チェロによって歌い出されるノクターン風のメロディの何という美しさ!それが少しずつ翳りをましながら発展していくと、やがて音楽はハ短調に変わり情熱的に盛り上がります。
「人間の美しい感情が波のように上下する」(シューマン)
第3楽章 スケルツォ アレグロ 変ロ長調
トリオでのヴァイオリンとチェロによる伸びやかな歌が素晴らしい楽章
第4楽章 ロンド アレグロ・ヴィヴァーチェ 変ロ長調

ピアノ三重奏曲 第2番(D.929)
第1楽章 アレグロ 変ホ長調
力にあふれたユニゾンによる第1主題に続いてチェロが歌い出す。これを聴いただけで耳は釘付けになってしまいます。
第2楽章 アンダンテ・コン・モート ハ短調
寂寞とした孤独感と絶望感に彩られた楽章。おそらくは、シューベルトが書いた室内楽の最高傑作。
第3楽章 スケルツァンド アレグロ・モデラート 変ホ長調
力強くリズミックな音楽でありながら、それが突然断ち切られてppの一節が挿入される。それが人生というものか?
第4楽章 アレグロ・モデラート 変ホ長調
哀感に満ちた第2楽章の主題が明るさに満ちたフィナーレの中で使われています。カットが施された版でも700小節を超えるという想像を絶するような長大な楽章です。

親密であり完成度の高い演奏


この顔ぶれを見るとオイストラフを聞くことになるのかな?と思ったのですが、あまり出しゃばることもなくキッチリとしたあわせものになっているような気がします。実に親密であり完成度の高い演奏になっていると思います。また、この時代の録音としてはかなり優秀な部類にはいるのも魅力的です。

そこで、オイストラフ以外の面子ですが、オボーリンは後にオイストラフと組んで素晴らしいベートーベンのヴァイオリンソナタの全集を作ったのでご存じの方も多いでしょう。しかし、クヌシェヴィツキーとなるとおそらくは「Who are you?」という人がほとんどでしょう。それは実はユング君も同じであって、早速にGoogleして調べてみました。

すると、モノラル時代にはそれなりに活躍したチェリストのようですが、その後ロストロポーヴィッチ、シャフラン、ピアティゴルスキーなどという超弩級が次々と登場していく中で次第に過去の人になってしまったようです。しかし、オイストラフが室内楽をするときはチェリストはいつもクヌシェヴィツキーだったようで、ベートーベンの大公トリオも全く同じメンバーで録音しています。今さら再評価が始まるとは思えませんが、結構侮れないおじさんのようです。

よせられたコメント

2009-08-02:ぶるべり


2009-10-08:シューベルト好き


2010-03-31:シューベルティアン


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-05-25]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 K.159(Mozart:String Quartet No.6 in B-flat major, K.159)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-05-23]

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488(Mozart:Piano Concerto No. 23 in A major, K.488)
(P)マルグリット・ロン:フィリップ・ゴーベール指揮 パリ交響楽団 1935年12月13日録音(Marguerite Long:(Con)Philippe Gaubert The Paris Symphony Orchestra Recorded on December 13, 1935)

[2024-05-21]

ボッケリーニ:チェロ協奏曲第9番 G.482(Boccherini:Cello Concerto No.9 in B flat major, G.482)
(Cell)ガスパール・カサド:ルドルフ・モラルト指揮 ウィーン・プロ・ムジカ管弦楽団 1958年発行(Gaspar Cassado:(Con)Rudolf Moralt Vienna Pro Musica Orchestra Released in 1958)

[2024-05-19]

ブラームス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番ト長調 Op.78(Brahms:Violin Sonata No.1 in G major, Op.78)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1951年1月4日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on January 4, 1951)

[2024-05-17]

リスト:ペトラルカのソネット104番(Liszt:Deuxieme annee:Italie, S.161 Sonetto 104 del Petrarca)
(P)チャールズ・ローゼン 1963年12月録音(Charles Rosen:Recorded on December, 1963)

[2024-05-15]

サン=サーンス:ハバネラ Op.83(Saint-Saens:Havanaise, for violin & piano (or orchestra) in E major, Op. 83)
(Vn)ジャック・ティボー (P)タッソ・ヤノプーロ 1933年7月1日録音(Jacques Thibaud:(P)Tasso Janopoulo Recorded on July 1, 1933)

[2024-05-13]

ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲, Op.437(Johann Strauss:Emperor Waltz, Op.437)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1962年録音(Jascha Horenstein:Vienna State Opera Orchestra Recorded on December, 1962)

[2024-05-11]

バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番 Sz.119(Bartok:Piano Concerto No.3 in E major, Sz.119)
(P)ジェルジ・シャーンドル:ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1947年4月19日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Eugene Ormandy The Philadelphia Orchestra Recorded on April 19, 1947)

[2024-05-08]

ハイドン:弦楽四重奏曲第6番 ハ長調 ,Op. 1, No. 6, Hob.III:6(Haydn:String Quartet No.6 in C Major, Op. 1, No.6, Hob.3:6)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)

[2024-05-06]

ショーソン:協奏曲 Op.21(Chausson:Concert for Violin, Piano and String Quartet, Op.21)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッテ ギレ四重奏団 1954年12月1日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Guilet String Quartet Recorded on December 1, 1954)

?>