クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーベン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15

(P)バックハウス ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 ウィーンフィル 1958年録音





Beethoven:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15 「第1楽章」

Beethoven:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15 「第2楽章」

Beethoven:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15 「第3楽章」


若きベートーベンの自信作・・・大協奏曲!!

この作品は番号は1番ですが、作曲されたのは2番よりも後です。現行の2番は完成した後に筆を加えたり出版が遅れたりして番号が入れ替わってしまったわけです。
ベートーベンは第2番の協奏曲の方にはたんに「協奏曲」として出版していますが、この第1番の方は「大協奏曲」としています。それはこの作品に寄せる並々ならぬ自信の作品でもあったわけですが、大編成の管弦楽とそれに張り合うピアノの扱いなどを見ると、当時としては大協奏曲と銘打っても不思議ではない作品となっています。

この作品はベートーベンがウィーンに出てきて間もない頃に書かれたと言われています。当時のベートーベンは作曲家としてよりもピアニストとして認められていたわけですから、モーツァルトと同様に、自らの演奏会のためにこのような作品は必要不可欠だったわけです。
演奏効果満点の第1楽章と、将来のベートーベンを彷彿とさせるに十分な激しさを内包した最終楽章、そしてもこれもまたベートーベンを特徴づける詩的な美しさをもったラルゴの第2楽章。どれをとっても演奏会用のピースとして求められるあらゆる要素をもったすぐれモノの協奏曲です。

なお、この作品の第1楽章にはベートーベン自身による3種類のカデンツァが残されていますが、これらは作曲当時に書かれたものではなくて、かなり後になってからルドルフ大公のために書かれたものだと言われています。

mouthpiece of the composer


バックハウスのベートーベンと言えばもっともドイツ的なものとして、その高い精神性が云々されます。そして、その高い「精神性」によって、一部の人は彼のことを神のごとく崇め奉り、また他の人々は同じ事をもって敬して遠ざけるようになってしまいました。
それは、どちらのスタンスをとるにしてもバックハウスにとっては迷惑な話だったでしょう。

バックハウスというピアニストを評してもっとも適切なる言葉は「mouthpiece of the composer」に尽きるのではないでしょうか。
まさに、作曲家の代弁者として歌を歌う人、それがバックハウスの本質だったのではないでしょうか。そして、そこに「高い精神性」を見る人がいても不思議には思いませんが、バックハウス自身にとってはそのような「精神性」云々はどうでもいい話だったはずです。彼にとってもっとも大切だったことは作曲家と心を合わせて、その代理人としてピアノを演奏することだったはずです。

そして、これが大切なことですが、そういうバックハウスのスタンスは数あるピアニストの有り様の一つにしか過ぎないと言うことです。そして、その有り様は、新即物主義という時代の潮流に即したものであって、決して綿々と受け継がれてきたドイツ音楽の伝統に則った絶対的なものではないのです。
と言うか、そういう意味における「ドイツ的」なるものは存在した試しはないのです。

「mouthpiece of the composer」としてのバックハウスと対極に位置するのはホロヴィッツです。
彼は何を演奏しても「mouthpiece of the composer」となることを拒否したピアニストでした。彼が演奏すれば、ショパンであれベートーベンであれ、それは全てホロヴィッツの音楽になりました。そして、当然のことですが、その事をもって芸術としての価値を論じるなどは愚の極みです。

スコアを前にして、何もしないバックハウスも素敵ですが、常に何かをせねば気が済まないホロヴィッツも素敵なのです。
そして、贅沢きわまる現在の聞き手は、その日の気分によって選択できるのです。そんな楽しみに、つまらぬ価値論争を持ち込むことは野暮というものです。

よせられたコメント

2012-03-27:homuda


2013-08-08:Joshua


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-05-25]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 K.159(Mozart:String Quartet No.6 in B-flat major, K.159)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-05-23]

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488(Mozart:Piano Concerto No. 23 in A major, K.488)
(P)マルグリット・ロン:フィリップ・ゴーベール指揮 パリ交響楽団 1935年12月13日録音(Marguerite Long:(Con)Philippe Gaubert The Paris Symphony Orchestra Recorded on December 13, 1935)

[2024-05-21]

ボッケリーニ:チェロ協奏曲第9番 G.482(Boccherini:Cello Concerto No.9 in B flat major, G.482)
(Cell)ガスパール・カサド:ルドルフ・モラルト指揮 ウィーン・プロ・ムジカ管弦楽団 1958年発行(Gaspar Cassado:(Con)Rudolf Moralt Vienna Pro Musica Orchestra Released in 1958)

[2024-05-19]

ブラームス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番ト長調 Op.78(Brahms:Violin Sonata No.1 in G major, Op.78)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1951年1月4日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on January 4, 1951)

[2024-05-17]

リスト:ペトラルカのソネット104番(Liszt:Deuxieme annee:Italie, S.161 Sonetto 104 del Petrarca)
(P)チャールズ・ローゼン 1963年12月録音(Charles Rosen:Recorded on December, 1963)

[2024-05-15]

サン=サーンス:ハバネラ Op.83(Saint-Saens:Havanaise, for violin & piano (or orchestra) in E major, Op. 83)
(Vn)ジャック・ティボー (P)タッソ・ヤノプーロ 1933年7月1日録音(Jacques Thibaud:(P)Tasso Janopoulo Recorded on July 1, 1933)

[2024-05-13]

ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲, Op.437(Johann Strauss:Emperor Waltz, Op.437)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1962年録音(Jascha Horenstein:Vienna State Opera Orchestra Recorded on December, 1962)

[2024-05-11]

バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番 Sz.119(Bartok:Piano Concerto No.3 in E major, Sz.119)
(P)ジェルジ・シャーンドル:ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1947年4月19日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Eugene Ormandy The Philadelphia Orchestra Recorded on April 19, 1947)

[2024-05-08]

ハイドン:弦楽四重奏曲第6番 ハ長調 ,Op. 1, No. 6, Hob.III:6(Haydn:String Quartet No.6 in C Major, Op. 1, No.6, Hob.3:6)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)

[2024-05-06]

ショーソン:協奏曲 Op.21(Chausson:Concert for Violin, Piano and String Quartet, Op.21)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッテ ギレ四重奏団 1954年12月1日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Guilet String Quartet Recorded on December 1, 1954)

?>