クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーベン:ピアノソナタ第21番 ハ長調 作品53 「ワルトシュタイン」

(P)バックハウス 1958年録音





Beethoven:ピアノソナタ第21番 ハ長調  「ヴァルトシュタイン」 作品53 「第1楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第21番 ハ長調  「ヴァルトシュタイン」 作品53 「第2楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第21番 ハ長調  「ヴァルトシュタイン」 作品53 「第3楽章」


天空を仰ぎ見るようなおおらかさを持った作品

ベートーベンの中期を代表する傑作の一つです。

今までのピアノソナタにはなかったような演奏効果を盛り込んで、実に聴き応えのある作品に仕上がっています。誰かが言ったようにまさに天空を仰ぎ見るような作品です。

また表題となっているワルトシュタインは、ベートーベンのパトロンの一人であったワルトシュタイン伯爵によるものです。ワルトシュタイン伯爵はボン時代のベートーベンに「モーツァルトの精神をハイドンから受け取りなさい」と言って、ウィーンに旅立つベートーベンを励ました人です。
経済的にも大きな支援を与えた人物ですが、それ以上にその豊かな教養がベートーベンに大きなプラス面をもたらした人として注目に値します。その意味で、まさにこの傑作を献呈されるにふさわしい人物だったといえます。

ピアノソナタ21番「ワルトシュタイン」 Op.53 ハ長調
第1楽章
 アレグロ・コン・ブリオ ハ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
第2楽章
 アダージョ・モルト ヘ長調 8分の6拍子 三部形式
天使のほほえみがにわかに雲に覆われたよう。導入部をそのように喩えた人がいました。

評価の分かれる演奏


随分と評価の割れるバックハウス二度目のソナタ全集です。
私自身も、以前にモノラルによる旧全集をアップしたときにこんな事を書いていました。

「面白いのが、音質的には劣るモノラル録音の方がステレオ録音よりも高く値段が設定されていることです。・・・こういう古い録音は最終的には需要と供給の関係で決まるようですから、多くの人が音質的には劣ることは分かっているのにモノラル録音を求めることをこの事実は示しています。
理由はいうまでもありません、演奏そのものが圧倒的にモノラル録音の方が優れているからです。」

この評価は、今も私のなかでは変わっていません。
ですから、このステレオ録音による新全集もアップしようかどうかいささか悩みました。(初期に録音したものはパブリックドメインの仲間入りをしはじめました。)
しかし、世間的には、今もってこのステレオ録音はベートーベン演奏の一つのスタンダードとして位置づけられているのですから、その評価は多くの聞き手にゆだねるべきだろうと思って、アップすることにしました。

私がこのステレオ録音に不満を感じるのは、モノラルの時代にはみなぎっていた「覇気」が、ここでは随分おとなしくなってしまっていることです。
もちろん、悪い演奏ではないと思います。
なかには、絶対的権威への反発からかこの演奏をぼろくそに貶す人がいますし、その事をもって己の見る目の高さを誇る向きもあります。しかし、そこまで言われるほどに「酷い演奏」ではないと思います。
しかし、ベートーベン演奏の絶対的権威とも言うべき演奏なのかと言われれば、それもまた首をかしげざるを得ません。

つまりは、数ある優れたベートーベン演奏の一つ、としてあるがままに受け入れればいいのではないかと思います。
確かに、この一連の演奏を聴いて随分とぞんざいな弾き方だと思う人もいるでしょう。逆に、私が「覇気」が乏しいと批判しても「淡々と流れ行く音楽のエネルギーの底に、何か静かな瞑想的な静けさを感じます。」という人もいるでしょう。
さらに言えば、「モノラルの録音なんか聞いていられるか、聞くならステレオでしょう!」という方もおられるでしょう。

ただ、やはりバックハウスほどの人でも年を取れば衰えるんだな、という全く当たり前のことを感じつつ、心静かに聞くことの出来る年寄りには相応しい音楽なのかもしれません。
私も、そう言う年になってしまいました。

よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-05-17]

リスト:ペトラルカのソネット104番(Liszt:Deuxieme annee:Italie, S.161 Sonetto 104 del Petrarca)
(P)チャールズ・ローゼン 1963年12月録音(Charles Rosen:Recorded on December, 1963)

[2024-05-15]

サン=サーンス:ハバネラ Op.83(Saint-Saens:Havanaise, for violin & piano (or orchestra) in E major, Op. 83)
(Vn)ジャック・ティボー (P)タッソ・ヤノプーロ 1933年7月1日録音(Jacques Thibaud:(P)Tasso Janopoulo Recorded on July 1, 1933)

[2024-05-13]

ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲, Op.437(Johann Strauss:Emperor Waltz, Op.437)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1962年録音(Jascha Horenstein:Vienna State Opera Orchestra Recorded on December, 1962)

[2024-05-11]

バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番 Sz.119(Bartok:Piano Concerto No.3 in E major, Sz.119)
(P)ジェルジ・シャーンドル:ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1947年4月19日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Eugene Ormandy The Philadelphia Orchestra Recorded on April 19, 1947)

[2024-05-08]

ハイドン:弦楽四重奏曲第6番 ハ長調 ,Op. 1, No. 6, Hob.III:6(Haydn:String Quartet No.6 in C Major, Op. 1, No.6, Hob.3:6)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)

[2024-05-06]

ショーソン:協奏曲 Op.21(Chausson:Concert for Violin, Piano and String Quartet, Op.21)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッテ ギレ四重奏団 1954年12月1日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Guilet String Quartet Recorded on December 1, 1954)

[2024-05-05]

スカルラッティ:20のソナタ集(4)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1940年3月8日~9日録音(Wanda Landowska:Recorded on March 8-9, 1940)

[2024-05-04]

スカルラッティ:20のソナタ集(3)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1939年1月9日,11日&12日録音(Wanda Landowska:Recorded on January 9,11&12, 1939

[2024-05-03]

スカルラッティ:20のソナタ集(2)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1940年3月8日~9日録音(Wanda Landowska:Recorded on March 8-9, 1940)

[2024-05-02]

スカルラッティ:20のソナタ集(1)(Scarlatti:20 Sonates Pour Clavecin)
(Cembalo)ワンダ・ランドフスカ:1940年3月8日~9日録音(Wanda Landowska:Recorded on March 8-9, 1940)

?>