クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

リスト:交響詩「プレリュード」

アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1960年6月録音





Franz Liszt:Symphonic Poem "Les Preludes" S.97


人生は死への前奏曲

交響詩という形式はリストの手になるものと言われています。それだけに「フン族の戦争」などというけったいな題名のついた作品をはじめとして実にたくさん作曲しています。しかし、その殆どはめったに演奏されることはないようで、録音もあまりお目にかかりません。そんな中で、唯一ポピュラリティを獲得しているのがこの「プレリュード(前奏曲)」です。
 これはフランスの詩人ラマルティーヌの「詩的瞑想録」に題を得たものだと言われています。ものの本によると(^^;、リストはスコアの扉にこのように記しているそうです。
 「人生は死への前奏曲でなくて何であろうか。愛は全ての存在にとって魅惑的な朝である。しかし運命は冷酷な嵐によって青春の幸福を必ず破壊してしまう。傷つけられた魂は孤独な田園生活にその慰めを見いだすが、人はその静けさの中に長くいることに耐えられない。トランペットの警告がなりわたるとき、すべての人は自分自身の意義を求めて再び闘いの中心に飛び込んでゆく」

 こう言うのを読むと、何か人生で辛いことがあったのかな、などと思ってしまいますが、調べてみるとこれが作曲されたときは、2番目の愛人となったヴィトゲンシュタイン侯爵夫人との同棲生活に入って、もっとも幸せの絶頂にいたころなんですね。でも、考えてみるとこれは当然のことで、不幸のどん底にいる人が「人生は死への前奏曲である・・・・」なんて言って曲作りをするなんて不可能です。
 自分がそういう不幸とは一番遠いところにいるからこそ、逆にこのようなテーマで曲作りが出きるのだと言えます。そして同時に、こういう大仰な物言いの中から、いわゆる「ロマン派的な価値観」が垣間見られるような気がします。

ドラティとロンドン交響楽団というのは実に相性のいい組み合わせ


ドラティとロンドン交響楽団というのは実に相性のいい組み合わせで、彼の手兵であったミネアポリスのオケとの録音を聞き比べてみると、オケの個性のようなものがよく分かります。
1960年の6月に、何でもないような小品を録音しています。


  1. リスト:交響詩「前奏曲」

  2. シベリウス:「悲しきワルツ」

  3. スメタナ:「モルダウ」



この年は、長年率いてきたミネアポリス交響楽団との関係を終えてアメリカでの活動を一段落させて、その軸足をヨーロッパに置き始めた時期かと思われます。
1957年からはフィルハーモニア・フンガリカを率いていましたが、さらに、ミネアポリスから手を引いてからはBBC交響楽団(1963 - 1966年)、ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団(1966年 - 1970年)などを率いていきます。

しかし、録音活動としては、彼にとって特別な存在であったフィルハーモニア・フンガリカと成し遂げたハイドンの交響曲全集を別格とすれば、ロンドン交響楽団との活動が大きな位置を占めています。ロンドン響とは50年代の中頃からポツポツと録音活動を行っているのですが、この60年からはその活動が一気に本格化します。
ですから、この何でもない小品は、あらためて挨拶代わりのような意味合いもあったのかもしれません。

同じ事を何度も繰り返して恐縮なのですが、ミネアポリスのオケもドラティの薫陶のおかげで健闘はしているのですが、それでもロンドンのオケを聞いてしまうと「荒い」という印象は拭いきれません。
ただ、ミネアポリス交響楽団の名誉のために言い添えておきますが、「Mercury」レーベルの録音は基本的に全てワンポイント録音で行われていることを思い出してください。

ワンポイント録音というのはモノラルならば一本のマイク、ステレオ録音になってからは左右に一本ずつ追加して合計で3本というスタイルです。ですから、3トラックに録音した音を2チャンネルにトラックダウンするだけですから、録音してからの調整などはほとんどできません。録音してからいかようにも料理できるマルチマイク録音と違って、演奏する側に一切の誤魔化しを許さない録音スタイルなのです。

上手に化粧を施された最新録音を聞きなれた耳からすれば、ミネアポリス交響楽団は「荒さ」みたいなものを感じるのですが、誤魔化し無しでこれだけ演奏できれば実は大したものなのです。
しかし、同じような手法で録音されているロンドン交響楽団では、悲しいかな、その様な「荒さ」はほとんど感じないのです。さらに、オケの響きには厚みと太さがあり、アメリカとは違うヨーロピアントーンなので、やっぱり違うなぁ・・・と思ってしまうのです。

よせられたコメント

2020-02-12:Sammy


2021-07-24:コタロー


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