ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
マルケヴィッチ指揮 ラムルー管弦楽団 1957年10月21日~25日録 & 11月8日音
Beethoven:Symphony No.6 in F major , Op.68 Pastoral [1.Allegro Ma Non Troppo (Apacibles Sentimientos Que Despierta La Contemplacion De Los Campos)]
Beethoven:Symphony No.6 in F major , Op.68 Pastoral [2.Andante Molto Moto (Escena Junto Al Arroyo)]
Beethoven:Symphony No.6 in F major , Op.68 Pastoral [3.Allegro (Animada Reunion De Campesinos) ]
Beethoven:Symphony No.6 in F major , Op.68 Pastoral [4.Allegro (La Tormenta, La Tempestad) ]
Beethoven:Symphony No.6 in F major , Op.68 Pastoral [5.Allegretto (Cancion Pastoril, Gratitud Y Reconocimiento Despues De La Tormenta)]
標題付きの交響曲
よく知られているように、この作品にはベートーベン自身による標題がつけられています。
第1楽章:「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」
第2楽章:「小川のほとりの情景」
第3楽章:「農民の楽しい集い」
第4楽章:「雷雨、雨」
第5楽章:「牧人の歌、嵐のあとの喜ばしい感謝の感情」
また、第3楽章以降は切れ目なしに演奏されるのも今までない趣向です。
これらの特徴は、このあとのロマン派の時代に引き継がれ大きな影響を与えることになります。
しかし、世間にはベートーベンの音楽をこのような標題で理解するのが我慢できない人が多くて、「そのような標題にとらわれることなく純粋に絶対的な音楽として理解するべきだ!」と宣っています。
このような人は何の論証も抜きに標題音楽は絶対音楽に劣る存在と思っているらしくて、偉大にして神聖なるベートーベンの音楽がレベルの低い「標題音楽」として理解されることが我慢できないようです。ご苦労さんな事です。
しかし、そういう頭でっかちな聴き方をしない普通の聞き手なら、ベートーベンが与えた標題が音楽の雰囲気を実にうまく表現していることに気づくはずです。
前作の5番で人間の内面的世界の劇的な葛藤を描いたベートーベンは、自然という外的世界を描いても一流であったと言うことです。同時期に全く正反対と思えるような作品を創作したのがベートーベンの特長であることはよく知られていますが、ここでもその特徴が発揮されたと言うことでしょう。
またあまり知られていないことですが、残されたスケッチから最終楽章に合唱を導入しようとしたことが指摘されています。
もしそれが実現していたならば、第五の「運命」との対比はよりはっきりした物になったでしょうし、年末がくれば第九ばかり聞かされると言う「苦行(^^;」を味わうこともなかったでしょう。
ちょっと残念なことです。
マルケヴィッチの目に映った田園の風景
マルケヴィッチ&ラムルー管によるベートーベン録音のなかで何故か第6番の「田園」だけをアップしていませんでした。どうしてかな?と思って調べてみるとこんな事を書いていました。
私はベートーベンの交響曲を品定めするときは、昔は第3番「エロイカ」を使っていました。・・、それが何時しか品定めの曲が「エロイカ」から「田園」に変わっていきました。
これは別に大きな理由はなくて、経験の積み重ねの中で、そちらの方が品定めには相応しいと感じるようになってきたからです。
まずは、冒頭の部分でオケをどれほど伸びやかに歌わせてくれるか、管楽器の響きは美しいか、嵐の場面での迫力やいかに、そして何よりも最終楽章の牧人のテーマがどれほどしみじみと心の底から歌い出してくれるか、等です。
そして、このマルケヴィッチ&ラムルー管によるベートーベンもまた「田園」から聞いてみたのですが、これがもう、とんでもないはずれの演奏だったのです。
マルケヴィッチの演奏を聴いて何が気に入らなかったのか、自分の事ながら不思議に思ったのですが、聞き直してみて記憶が蘇ってきてなるほどと思った次第です。
ポイントは「冒頭の部分でオケをどれほど伸びやかに歌わせてくれるか、管楽器の響きは美しいか、嵐の場面での迫力やいかに、そして何よりも最終楽章の牧人のテーマがどれほどしみじみと心の底から歌い出してくれるか」というチェック項目にありました。
ここで聞くことのできる「田園」は人の心を伸びやかにしてくれる美しい風景ではなくて、どこかゴツゴツとした荒れ果てた風景がひろがっています。
嵐の風景はまさにこの世の終わりの如しです。
そして、最後の牧人のテーマも感謝に満ちた祈りと言うよりは、どこか悲嘆のなかを家路につく嘆きのように聞こえたりもします。もしかしたらそれは、地獄の嵐の中で一家皆殺しにあったかと思ってしまうほどです。
これが、私の中にある「田園」という音楽の原風景とあまりにもミスマッチだったのです。
そういえば、ベートーベンは全く同じ時期に全く性格の異なる音楽を平行して書くと言われます。その典型が5番と6番の交響曲であったり、4番と5番のヴァイオリンソナタだったりするわけです。
第5番の「運命」は荒々しくも悲劇的であるのに対して、第6番はたおやかで優しい感情に満ちているというような対比です。
しかし、ブラームスの4番がまるで1番のように響くことを恐れないのであれば、「田園」が「運命」のように響いていても何の問題もないはずです。
それが、マルケヴィッチという男の目に映った「田園」と名づけられたシンフォニーのスコアのあるがままの姿であるならば、誰がなんと言っても知った話ではないのです。
そして、あの異形のブラームスの4番を受け入れてしまえば、この「田園」が受け入れられないはずはないのです。
マルケヴィッチという男には、予定調和だとか忖度などと言う言葉はどこを探してもないと思えば、聞き手もまたその様なものは全て向き合う必要があると言うことなのでしょう。
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