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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調, Op.58

(P)ロベール・カサドシュ:エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1959年3月1日~2日録音



Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58 [1.Allegro moderato]

Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58 [2.Andante con moto]

Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58 [3.Rondo. Vivace]


新しい世界への開拓

1805年に第3番の協奏曲を完成させたベートーベンは、このパセティックな作品とは全く異なる明るくて幸福感に満ちた新しい第4番の協奏曲を書き始めます。そして、翌年の7月に一応の完成を見たものの多少の手なしが必要だったようで、最終的にはその年の暮れ頃に完成しただろうと言われています。

この作品はピアノソナタの作曲家と交響曲の作曲家が融合した作品だと言われ、特にこの時期のベートーベンのを特徴づける新しい世界への開拓精神があふれた作品だと言われてきました。
それは、第1楽章の冒頭においてピアノが第1主題を奏して音楽が始まるとか、第2楽章がフェルマータで終了してそのまま第3楽章に切れ目なく流れていくとか、そう言う形式的な面だけではなりません。もちろんそれも重要な要因ですが、それよりも重要なことは作品全体に漂う即興性と幻想的な性格にこそベートーベンの新しいチャレンジがあります。

その意味で、この作品に呼応するのが交響曲の第4番でしょう。
壮大で構築的な「エロイカ」を書いたベートーベンが次にチャレンジした第4番はガラリとその性格を変えて、何よりもファンタジックなものを交響曲という形式に持ち込もうとしました。それと同じ方向性がこの協奏曲の中にも流れています。
パセティックでアパショナータなベートーベンは姿を潜め、ロマンティックでファンタジックなベートーベンが姿をあらわしているのです。

とりわけ、第2楽章で聞くことの出来る「歌」の素晴らしさは、その様なベートーベンの新生面をはっきりと示しています。
「復讐の女神たちをやわらげるオルフェウス」とリストは語りましたし、ショパンのプレリュードにまでこの楽章の影響が及んでいることを指摘する人もいます。
そして、これを持ってベートーベンのピアノ協奏曲の最高傑作とする人もいます。私も個人的には第5番の協奏曲よりもこちらの方を高く評価しています。(そんなことはどうでもいい!と言われそうですが・・・)


ベイヌム最晩年の貴重な記録

ベイヌム&コンセルトヘボウとカサドシュの組み合わせというのは珍しいのではないでしょうか。
聞くところによると、この録音はパリでの演奏会での直前に録音されたもので、その二日後の演奏会場で発売されたと言うことです。最近のウィーン・フィルのニュー・イヤーコンサートも間髪を入れずにCDがリリースされるのですが、さすがにこの2日後というスピードには未だ追いついていません。(^^;
ですから、おそらく未だもって録音からリリースまでの世界最短記録を保持しているのではないでしょうか。

そして、一応はセッションを組んでの録音なのですが、おそらくはほぼ一発録りだったと思われます。そう思えば、このカサドシュらしい粒の揃った繊細なニュアンスに溢れたピアノも魅力なのですが、ベイヌムとコンセルトヘボウが紡ぎ出す美しさは格別です。
カサドシュのピアノ協奏曲と言えばセルとクリーブランド管との組み合わせを思い出さずにはおれないのですが、こういうコンセルトヘボウのような美しさを持ったオケとの共演は非常に魅力的です。

おそらく、カサドシュの意向が尊重されているからと思われるのですが、重厚で重々しいベートーベンではなくて、基本的に繊細で優美なベートーベン像に仕上がっていて、そう言うベートーベンを形づくっていくコンセルトヘボウとベイヌムのサポートが実に大したものだと思ってしまいます。

なお、ベイヌムはこの録音が行われた年の4月13日にアムステルダムでブラームスの交響曲第1番のリハーサルを行っていた最中に心臓発作で倒れ、15日には帰らぬ人となってしまいました。
ですから、これはまさにベイヌム最晩年の貴重な記録だと見えます。

この演奏を評価してください。

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2022-01-11:田中 斉





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