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カンテッリ(Guido Cantelli)|シューマン:交響曲第4番 ニ短調 作品120
シューマン:交響曲第4番 ニ短調 作品120
グィード・カンテッリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1953年5月15日&21日録音
Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [1.Ziemlich langsam - Lebhaft]
Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [2.Romanze: Ziemlich langsam]
Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [3.Scherzo: Lebhaft]
Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [4.Langsam - Lebhaft]
マーラーへとつながっていく作品なのでしょうか?
シューマンのシンフォニーというのは年代的に見ればベートーベンとブラームスの中間に位置します。ですから、交響曲の系譜がベートーベン-シューマン-ブラームスと引き継がれてきたのかと言えば、それはちょっと違うようです。
ロマン派の時代にあってはメロディとそれをより豊かに彩る和声に重点が置かれていて、そのことは交響曲のような形式とはあまり相性がよいとは言い難いものでした。
そのことは、リストによる交響詩の創作にも見られるように、構築物として音楽を仕上げるよりは物語として仕上げることに向いた仕様だったといえます。
こういう書き方をすると誤解を招くかもしれませんが、シューマンの交響曲を聴いていると、それはベートーベンから受け継いだものをブラームスへと受け継いでいくような存在ではなくて、ベートーベンで行き着いた袋小路から枝分かれしていった一つの枝のような存在であり、それがリストに代表される交響詩へと成長していったと把握した方が実態に近いのではないかと思います。
とりわけこの第4番の交響曲を聴くと、それはベートーベン的な構築物よりは、交響詩の世界の方により近いことを実感させられます。
事実、シューマン自身もこの作品を当初は「交響的幻想曲」とよんでいました。
この作品は番号は4番となっていますが、作曲されたのは第1番と同じ1841年です。当初はその作曲順の通りに第2番とされていて、同じ年に初演もされています。
しかし、第1番と違って初演の評判は芳しくなく、そのためにシューマンは出版を見あわせてしまいます。
そのために、5年後に作曲された交響曲が第2番と名付けられることになりました。
その後この作品はシューマン自身によって金管楽器などの扱いに手直しが加えられて、1853年にようやくにして出版されることになります。
シューマンの音楽というのはどこか内へ内へと沈み込んでいくような雰囲気があるのですが、4曲ある交響曲の中でもその様な雰囲気がもっとも色濃く表面にでているのがこの第4番の交響曲です。
そして、こういう作品をフルトヴェングラーのような演奏で聞くと、「そうか、これはリストではなくてマーラーにつながっていくんだ」と気づかされたりする作品です。
第3楽章から第4楽章につながっていく部分は誰かが「まるでベートーベンの運命のパロディのようだ!」と書いていましたが、そういう部分にもシューマンの狂気のようなのぞいているような気がします。
トスカニーニの方法論を、それこそ真っ正直に、ある意味では原理主義的に適用すればシューマンはこのような姿を見せるのかもしれません
こういう演奏を聴くと、カンテッリにとっては自分を引き上げてくれたトスカニーニの影響は大きかったのかなと思ってしまいます。
そして、ふと頭をよぎったのはバイロン・ジャニスとホロヴィッツの関係です。
ホロヴィッツは不思議なことにラフマニノフの2番は一度も録音をしていません。そのラフマニノフを
若いバイロン・ジャニスが録音をしているのですが、それはもう、もしもホロヴィッツが録音してたならばこんな感じだったろうなと思わせる録音になっています。
それに対してトスカニーニとシューマンというのは最初からかなりミスマッチな感じであり、特にこの4番は一つも録音を残していないはずです。
その第4番の交響曲をカンテッリが取り上げたのがこの録音なのですが、これもまた、もしもトスカニーニが指揮をしてたらこんな感じだったろうなと思わせる録音になっているのです。
もちろん、あまりにも真っ直ぐにすぎて若すぎる演奏だという評価もあるでしょう。例えば、フルトヴェングラー的な造形を良しとする立場から見れば。これはあまりの若すぎる演奏であることは事実です。
しかし、クラシック音楽というのは多様な解釈を許す芸術であり、その屈折した情念を整理しきったとしても、それはそれで別の姿を見せてくれることもあるのです。
「ベートーベンのエロイカといえどもそれはただのアレグロ・コン・ブリオにしかすぎない」と言ったトスカニーニの方法論を、それこそ真っ正直に、ある意味では原理主義的に信じて適用すれば、シューマンの4番もまたこのような姿を見せるのかもしれません。
ですから、これが本当にカンテッリという人の心の中にある音楽の形とピッタリと重なるものであったのかどうかには疑問があります。
そこには、トスカニーニからの評価と期待にこたえたいという気持ちが全くなかったとはいいきれないような気がするのです。
1954年にトスカニーニが第一線から引退し、それに伴ってNBC交響楽団も解散し、さらにはカンテッリ自身も活動の軸足をヨーロッパに移すようになると、その音楽の形を変えていった事は間違いありません。
しかし、こうして、あっけにとられるほどに割り切った演奏を聴かされると、それはそれでいささか残念な気持ちになることも事実です。
とは言え、その変化が彼にとってどういう実りをもたらしたのかは、それを明らかにする暇もなく彼はこの世を去ってしまいました。
その事に、どうしようもないもどかしさを感じてしまうのです。
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