クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでアンセルメ(Ernest Ansermet)のCDをさがす
Home|アンセルメ(Ernest Ansermet)|ボロディン:交響曲第2番 ロ短調

ボロディン:交響曲第2番 ロ短調

アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1954年10月録音



Borodin:交響曲第2番 ロ短調 「第1楽章」

Borodin:交響曲第2番 ロ短調 「第2楽章」

Borodin:交響曲第2番 ロ短調 「第3楽章」

Borodin:交響曲第2番 ロ短調 「第4楽章」


ロシア国民楽派最高の交響曲

ボロディンと言えば「ロシア五人組」の一人として有名ですが、基本的には音楽を本職としない「日曜作曲家」でした。
聞くところによれば、彼はグルジア皇室の皇太子の子どもとして生まれながら、嫡出ではないと言うことで実子としては登録されなかったそうです。しかし、そういう法的な手続きはどうであれ、皇太子の子どもなのですから音楽も含めて非常にすぐれた教育を受けることが出来ました。よって、ペテルスブルクの医学大学の助教授、教授と進み、最後は有機化学の研究家として多大な業績を残した化学者というのが彼の「本職」となりました。

そんな立ち位置のためか、ボロディンの作品は「未完成」のままに放置されているものが少なくありません。たとえば、彼の代表作とされる「イーゴリ公」も、リムスキー・コルサコフの励ましにもかかわらず完成されることなく、最後は彼の突然の死によって未完成のままで終わりました。そして、それではあまりにも惜しいと思った友人のリムスキー・コルサコフが残されたスケッチなどをかき集めて今日のような「作品」に仕立て上げました。

確かに、彼は「本職」の化学者、教育者としての仕事が忙しくて作曲に時間がとれなかったという面も否定できませんが、基本的には「皇太子の子ども」というやんごとなき生まれのために、その辺の感覚が一般人とはかなりかけ離れていた事も大きく作用したようです。
とにかく、いい人であり、おおらかな人だったようです。

そのあたりのことは、友人のリムスキー・コルサコフが自伝の中であれこれ紹介しているそうです。

たとえば、スケッチを総譜(スコア)になかなか書き移さないので、リムスキー・コルサコフが焦りまくって「あのオペラの例の曲はもう総譜に移したでしょうね?」と聞くと、彼は「うん、もちろん」と答えたそうです。
よかった、間に合ったとと思ってリムスキー・コルサコフが駆けつけると、彼は「総譜はちゃんとピアノ上からから机の上に移しましたよ」と大真面目に答えたそうです。
これでは、怒る気にもなれないでしょうね。

そんな中で、この交響曲の第2番は完成まで8年の年月を要したとは言え、無事に完成にこぎつけたましたから、数少ない大作の中では貴重な存在だと言えます。ロシア国民楽派最高の交響曲とされ、ボロディン自身もこれが完成したときには「勇士」と言う名を与えたほどの自信作でした。

確かに、重厚なユニゾンで開始される第1楽章は「勇士」の名にふさわしい勇壮な音楽となっています。
しかし、この音楽で一番魅力的なのは、誰が何と言ってもアンダンテの第3楽章でしょう。こういう哀愁を含んだ音楽は彼の得意とするところで、冒頭のホルンの歌を聴いただけで心をギュッと掴まれてしまいます。
そして、彼に続くカリンニコフなどの源流がこんなところにあったのだと気づかせてくれます。まあ、そんなことを書いている人はどこにもいませんが、カリンニコフのあのロマンティックで美しい音楽はチャイコフスキーではなく、このボロディンにこそ近しさがあるように思います。
近年になってカリンニコフが再評価されたのですから、このボロディンの交響曲ももう少し演奏されてもいいのではないかと思います。


未だにスタンダードとしての位置を堅持している録音

録音は1954年ですが、何と立派なステレオ録音です。それも、現時点で聴いてもかなりの優秀録音と言えるほどの素晴らしさです。
こういう録音を聞かされると、この業界はこの半世紀の間、何をしていたのだろうとため息をついてしまいます。

細部の見通しもよく、そのためスラブ的な土臭さは全くない、どちらかと言えばフランス的な明晰さに貫かれた演奏です。その意味では、スヴェトラーノフの録音などとは対極にあるような演奏です。
ただし、哀愁満点の第3楽章から民族的な熱気に満ちた第4楽章になだれ込んでいくあたりの熱気は不足していません。
アンセルメという人は、なぜか不思議なことに、ロシア音楽との相性がいいようで、それは基本的には明晰で精緻な演奏を目指していながら、ポイントではロシア音楽に必須の「熱さ」が溢れ出してくるからでしょう。

それほど録音の数も多くない作品と言うこともあって、未だにスタンダードとしての位置を堅持している録音だと言えます。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



1297 Rating: 5.7/10 (189 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2010-09-24:T.KATO





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-04-24]

ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲, Op.120(Beethoven:Variations Diabelli in C major, Op.120)
(P)ジュリアス・カッチェン 1953年録音(Julius Katchen:Recorded on 1953)

[2024-04-22]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第4番 ハ長調 K.157(Mozart:String Quartet No.4 in C major, K.157)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-04-20]

ショパン:バラード第3番 変イ長調, Op.47(Chopin:Ballade No.3 in A-flat major, Op.47)
(P)アンドレ・チャイコフスキー:1959年3月10日~12日録音(Andre Tchaikowsky:Recorded on Recorded on March 10-12, 1959)

[2024-04-18]

エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調, Op.85(Elgar:Cello Concerto in E minor, Op.38)
(Cello)アンドレ・ナヴァラ:サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1957年録音(Andre Navarra:(Con)Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on 1957)

[2024-04-16]

フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1947年5月7日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on May 7, 1947)

[2024-04-14]

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」, Op.62(Beethoven:Coriolan, Op.62)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1945年6月1日録音(Arturo Toscanini:NBC Symphony Orchestra Recorded on June 1, 1945)

[2024-04-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第3番 ト長調 K.156/134b(Mozart:String Quartet No. 3 in G Major, K. 156)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-04-10]

ハイドン:弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調「狩」,Op. 1, No. 1, Hob.III:1(Haydn:String Quartet No.1 in B-Flat Major, Op. 1, No.1, Hob.3:1, "La chasse" )
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June 5, 1938)

[2024-04-08]

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18(Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18)
(P)ジェルジ・シャーンドル:アルトゥール・ロジンスキ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1946年1月2日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Artur Rodzinski New York Philharmonic Recorded on January 2, 1946)

[2024-04-06]

シベリウス:交響的幻想曲「ポヒョラの娘」(Sibelius:Pohjola's Daughter - Symphonic Fantasy Op.49)
カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1962年6月7日~8日録音(Karel Ancerl:The Czech Philharmonic Orchestra Recorded on June 7-8, 1962)